体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標の類似のケーススタディ(地名を含む商標の称呼類似) |
意味 |
商標の類似とは、2つの商標の外観・称呼・観念の何れかが相紛らわしい結果として、商品又は役務(以下「商品等」という)の識別標識として同一・類似の商品等に使用されたときに、取引の経験則上から出所混同を生じ得ることをいいます。
先願に係る他人の登録商標と同一・類似であって同一・類似の商品等に使用されるものでないことは商標出願が登録査定されることの条件の一つです。
ここでは短い商標の称呼類似に関してケーススタディします。
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内容 |
@地名を含む商標の称呼類似の意義
商標出願の審査において、“地名+A”の商標に対して審査官が地名を除く部分Aを商標の要部として、類否判断する場合があります。そうしたケースでも、拒絶査定不服審判にもっていくと、地名が形容詞的に使用されているものと判断して、地名を含む全体をひとまとまりの商標ととらえて判断されることがよくあります。
なお、記号“=”はその両側の商標・称呼が類似であることを、記号“×”はその両側の商標・称呼が類似であること意味するものとします。
A商標が類似と判断された事例 [事例1]
[対比する商標]“京もの匠”=“匠”
[称呼]“きょうものたくみ”=“たくみ”
[事件の表示]不服H01−4026
[審決の日付]平成7年8月30日
[指定商品・指定役務]旧第20類「記念カップ類、その他本類に属する商品」
[審判官の判断]ときに、京都は、織物、陶磁器、漆器、仏壇・仏具、たんす等の産地としても一般に知られており、「京都で産出する品物」を「京物」と言っているところである。そして、本願の指定商品に含まれている「仏壇、たんす」においても京都で産出する仏壇やたんすを「京仏壇」「京たんす」のように称しているものである。
してみると、本願商標中の「京もの」の文字は、「京都で産出する品物」即ち「京物」を容易に想起させるものということができるから、本願商標をその指定商品に使用したときには、これに接する取引者、需要者は、「京もの」の文字は商品の産地、品質を表示したものと理解するに止まるものというのが相当である。
そうとすれば、本願商標の自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は「匠」の文字にあり、これにより生ずる称呼のみをもって取引に資する場合も決して少なくないものといわなければならない。
そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して「キョウモノタクミ」の称呼を生ずるほか、単に、「タクミ」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用A商標及び引用B商標は、ともに「匠」の文字を書してなるから、当該文字に相応して「タクミ」の称呼を生ずるものである。
従って、本願商標と引用A商標及び引用B商標とは、「タクミ」の称呼を共通する類似の商標である。
A商標が非類似と判断された事例
[事例1]
[対比する商標]“甲州ハーベスト”דHARVEST/ハーベスト”
[称呼]“コウシュウハーベスト”דハーベスト”
[事件の表示]不服H11−6859
[審決の日付]平成14年2月22日
[指定商品・指定役務]第30類「穀物の加工品,サンドイッチ,すし,弁当,ピザ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン(氷砂糖及び水飴を除く),即席菓子のもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー」
[審判官の判断]
本願商標は、「甲州ハーベスト」の文字を書してなるものであるところ、構成各文字は外観上まとまりよく一体に表現されており、全体として「甲州(山梨県)で穫れた作物」の如き観念を生じさせるものである。
そうすると、本願商標は、その構成文字全体に相応して、「コウシュウハーベスト」の一連の称呼及び「甲州(山梨県)で穫れた作物」の如き観念を生じさせるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標より、「ハーベスト」の称呼をも生ずるとし、そのうえで、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
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留意点 |
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