体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標の類似のケーススタディ(屋号を含む商標の称呼類似) |
意味 |
商標の類似とは、2つの商標の外観・称呼・観念の何れかが相紛らわしい結果として、商品又は役務(以下「商品等」という)の識別標識として同一・類似の商品等に使用されたときに、取引の経験則上から出所混同を生じ得ることをいいます。
先願に係る他人の登録商標と同一・類似であって同一・類似の商品等に使用されるものでないことは商標出願が登録査定されることの条件の一つです。
ここでは屋号を含む商標の称呼類似に関してケーススタディします。
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内容 |
@商号商標の称呼類似の意義 商標出願の審査段階では、「株式会社」や「CO.,
LTD.」 「CORPORATION」
「COMPANY」など法人組織を表示する部分は、一般に除外して類否が判断されることが多いですが、近年では、拒絶査定不服審判において、商標全体として類否が審査され、原査定が覆されるケースが目立つようになっています。
なお、記号“=”はその両側の商標・称呼が類似であることを、記号“×”はその両側の商標・称呼が類似であること意味するものとします。
A商標が類似と判断された事例 [事例1]
[対比する商標]“リーガル コーポレーション”=“REGAL/リーガル”
(スラッシュ“/”はその前後の要素を二段書きにしたという意味)
[称呼]“リーガルコーポレーション”=“リーガル”
[事件の表示]不服H04−3391
[審決の日付]平成8年6月7日
[指定商品・指定役務]第17類
「被服、布製身回品、寝具類」
[審判官の判断]
本願商標は、一連の称呼としては、その構成文字に相応して「リーガルコーポレーション」の称呼を生ずるものである。しかしながら、株式会社集英社発行「情報・知識imidas1996」1418頁、同社発行「日本語になった外国語辞典」第2版第285頁、株式会社角川書店発行「角川外来語辞典」第2版414頁等の「コーポレーション」の項の記載に徴すれば、本願商標中の「コーポレーション」の文字は、「法人、株式会社、有限会社」を意味する語として一般に広く知られているものと言い得るところであり、自他商品の識別力の弱い語と解されるから、本願商標に接する取引者、需要者は、自他商品識別標識として強く印象に残る「リーガル」の文字部分を捉え、これにより生ずる称呼をもって取引に資する場合も少なくなく、したがって、本願商標は該文字に相応して単に「リーガル」の称呼をも生じると認めるのが、相当である。
一方、引用商標1は「“REGAL”」「リーガル」の文字よりなり、引用商標2は、「REGAL」の文字よりなるところ、「帝王にふさわしい、王者らしい」を意味する英語の「regal」が、「リーガル」と発音され比較的親しまれているものと言い得ることから、両商標の「REGAL」の文字は、英語読みにより「リーガル」と称呼されるものとみるのが自然であり、結局、両引用商標は「リーガル」の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
してみれば、本願商標と引用商標とは、外観及び観念において相違するところがあるとしても、「リーガル」の称呼を共通する類似の商標と認められる。
A商標が非類似と判断された事例 [事例1]
[対比する商標]“PINEAPPLE COMPANY”דPINEAPPLE/パイナップル”
(スラッシュ“/”はその前後の要素を二段書きにしたという意味)
[称呼]=
[事件の表示]不服2005−8755
[審決確定の日付]平成18年6月6日
[指定商品・指定役務]第18類及び第25類
[審判官の判断]
本願商標は、視覚上まとまりよく一体的に看取し得るものである。
また、その構成中の「COMPANY」の文字が「会社」を意味する場合があるとしても、該文字は、他に「仲間、交際」等の意味を有するものとしても一般によく知られているものであるから、殊更「PINEAPPLE」の文字部分のみに着目して取引に当たるとみるよりも、むしろ、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識され取引に当たるとみるのが自然である。
さらに、構成文字全体より生ずると認められる「パイナップルカンパニー」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼できるものである。
そうとすると、本願商標は、その構成文字全体に相応して「パイナップルカンパニー」の一連の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
したがって、本願商標より「パイナップル」の称呼をも生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
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留意点 |
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