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 商標に関する専門用語
  

 No:  094   

商標の類似CS/敬称を含む商標の称呼類似1/商標出願

 
体系 商標制度に関する事項
用語

商標の類似のケーススタディ(敬称を含む商標の称呼類似1)

意味  商標の類似とは、対比する商標の3態様(外観・称呼・観念)の何れかが相紛らわしい結果として、商品又は役務(以下「商品等」という)の識別標識として同一・類似の商品等に使用されたときに、取引の経験則上から出所混同を生じ得ることをいいます。

 他人の登録商標と同一・類似であって同一・類似の商品等に使用されるものを商標出願した場合には、その他人の登録商標が先願であることを条件として、当該商標出願は商標法第4条1項11号により拒絶されます。

 ここでは敬称を含む商標の称呼類似に関してケーススタディします。


内容 @敬称を含む商標の称呼類似の意義
 近年、商標の構成として、“○○君”、“○○さん”、“ドクター○○”、“ミスター○○”というような敬称を含む商標をよく見受けます。現実の人物の名前を呼ぶ場合に、“△△君”と呼んでも、“△△”と呼び捨てにしても、意味合いに大差はありませんが、商標の場合に、“△△君”という商標と“△△”と商標とではどのように判断されるのでしょうか。こうした問題を審判・異議の事例から検討します。
 以下、商標Aと商標Bとが類似であるときには、“A=B”と、非類似であるときには、“A×B”と表示します。

A敬称を含む商標と敬称を含まない商標とが類似と判断された事例
[事例1]

[対比する商標]“アトラス君”=“アトラス”

[称呼]アトラスクン=アトラス

[事件の表示]不服H07−6825

[審決確定日]平成12年4月20日

[指定商品・指定役務]
第9類「コンピューターソフトウェア,その他の電子応用機械器具及びその部品」

[審判官の判断]
 本願商標は、前記の通りカタカナと漢字により構成されているものであるから、外観上「アトラス」と「君」の部分に分離して看取されるばかりでなく、「アトラス」の文字は、ギリシャ神話の巨人の名前を表す語として広く知られているものであり、「君」の文字は、同輩や同輩以下の人の氏名の下に添える語であって、人名に添えるばかりでなく、子供向け商品や身近な商品についても擬人化し、愛称的にその名称に添えてしばしば用いられるものであるから、本願商標の自他商品識別標識としての機能を強く果たす部分は「アトラス」の部分にあるものというのが相当である。

 してみると、本願商標は、その構成文字に相応して「アトラスクン」の一連の称呼を生ずるものとするのは当然としても、実際の取引においては識別力の強い「アトラス」の文字部分から生ずる「アトラス」の称呼、観念をもって取引に資される場合も決して少なくないものといわざるを得ない。

 他方、引用商標は、その構成文字に相応して「アトラス」の称呼、観念を生ずること明らかである。

 してみれば、本願商標は、引用商標と称呼、観念を共通にするものであり、さらに、本願商標の「アトラス」の文字構成と引用商標の文字構成とはその態様においてほとんど同一のものである。
 したがって、本願商標と引用商標とは外観、称呼、観念の点を総合して観察した場合において、互いに紛れるおそれがある類似の商標である。

B敬称を含む商標と敬称を含まない商標とが非類似と判断された事例
[事例1]

[対比する商標]“ぜんだまくん”ד善玉”

[称呼]ゼンダマクン=ゼンダマ

[事件の表示]不服2010−24524

[審決確定日]平成23年5月7日

[指定商品・指定役務]第31類 野菜,果実,あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,飼料,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽

[審判官の判断]
 本願商標は、「ぜんだまくん」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔に外観上まとまりよく一体に表されていて、しかも構成文字全体から生ずる「ゼンダマクン」の称呼も、よどみなく一連に称呼できるものである。

 ところで、人名以外の語に、同輩及び同輩以下の人の氏名に添えて呼びかけとして用いられる「くん」、「君」等の語を結合して擬人化する用法があり、このような場合、両語を分離すべき特別の事情がないときは、全体として擬人化された造語を形成したものと理解・把握されるものとみるのが相当である。

 また、他に、本願商標は、その構成中「ぜんだま」の文字部分のみを分離抽出し検討しなければならない事情も見いだせない。

 他方、引用商標は、「善玉」の文字を横書きしてなるところ、該構成文字に相応して「ゼンダマ」の称呼が生ずるものであり、また、「善人の役。善人。」(広辞苑)の意味を有するものである。

 そこで、本願商標と引用商標との類否について検討すると、両商標は、外観において平仮名と漢字からなる構成において明らかな差異を有するものであり、称呼及び観念においては、本願商標は「ゼンダマクン」の一連の称呼及び擬人化された語を想起させるのに対し、引用商標は「ゼンダマ」の称呼及び「善人の役。善人。」の意味を生じさせる点に差異を有するものであるから、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。

[コメント]
 “アトラス”は、個人(ギリシャ神話の登場人物)の名前であるのに対して、“ぜんだま”は人の名前ではなく、こうした言葉にあえて“君”を付した点で、ユニークさがあると感じます。従って、“ぜんだまくん”が一体の識別標識であり、分離観察するべきではないとした審判官の判断は妥当であると考えます。

 しかしながら、人名でない言葉(△△)に“君”を付加して擬人化すれば、必ずしも元の言葉と非類似になる訳でもありません。元の言葉(△△)が造語か否かなどの観点を含めて需要者が出所混同を生ずるかどうかを判断するべきです。
商標の類似のケーススタディ(敬称を含む商標の称呼類似2)


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