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@解説 (a)一般に、商標登録の無効事由は次の3つのグループに分類されます。
(b)第1は、除斥期間の適用があり、かつ商標登録時に存在した事情のみが無効理由となるものです。 →除斥期間とは
例えば商標法第4条第1項第11号(先願かつ先登録の他人の登録商標との抵触)、商標法第4条第1項第15号(周知商標との抵触)などです。
これらは事業者の利益の保護を目的としているため、私益的無効事由と言われます。
(c)第2は、徐斥期間の適用があり、かつ商標登録時に存在した事情のみが無効理由となるものです。
例えば商標法第4条第1項第6号(国又は地方公共団体等、公益に関する団体であって営利を目的としないものなどを表示する標章と同一又は類似の商標)が該当します。
前述の私益的無効理由と後述の公益的無効理由の中間の性質を持つものです。
(c)第3は、商標登録後に存在した事情も無効理由となるものです。
商標法第4条第1項第1号(国旗・菊花紋章・褒賞又は外国の国旗等と同一・類似の商標)・同2号(パリ条約の同盟国などの国の紋章その他の記章とと同一・類似の商標)・同3号(国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一・類似の商標)・同5号(日本国又はパリ条約同盟国などのの監督用・証明用の印章・記号であって経済産業大臣が指定するものと同一・類似の商標)・同16号(商品・役務の質の誤認を生ずるおそれのある商標)です。
公益的無効事由と言われています。
A事例1
(a)平成24年(行ケ)第10065号は、無効審判の審決(請求認容)の取消請求事件です。「漢検」という商標が「技芸・スポーツまたは知識の教授」を指定役務として登録されていました。
(b)本件に関しては次の事情が認定されています。
・「漢検」は日本漢字能力検定の略である。
・日本漢字能力検定はもともと原告Aによって創設された。
・原告Aの代表取り締まり役であるBによって、被告Cが設立され、その後にCが日本漢字能力検定の実施主体となった。
・Cは設立と同時に文部省の認定を受け、公的資格とみなされるようになってから受験者数が急増した。
・原告Aは、検定の主体でなくなった後も、C名義の商標出願をAに名義変更するなどして商標権者になった。
・こうした事態に対して文部科学省から行政指導がなされるなどの事情があった。
・Bは本権商標権を実費相当額でAからCへ譲渡することを拒んでいる。
(c)裁判所は、“Bは、Cの理事会の承認を得ることなく、本件商標を含む、被告Cの名称ないし「日本漢字能力検定」に関わる商標を、A名義で出願したり、商標出願人の名義をCからAに変更するなどしており、そのこと自体、著しく妥当性を欠き、社会公共の利益を害すると評価する余地があり、さらにAがCへの権利の譲渡を拒んでいるなどの状況がある。これらに照らすと、Aは、商標権者などの業務上の信用のじじや需要者の利益保護という商標法の目的に反して、自らの保身を図るために、「日本漢字検定」にかかる商標を利用しているに過ぎず、その利用はCによる「日本漢字検定」の実施及び受験者に対する混乱を生じさせるから、社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、社会公共の利益を害するというべきである。”として後発的に商標法第4条第1項第7号に該当するに至ったと認めました。
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