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@商号商標の類似の意義
商標の類似は、出所混同を防止するための概念として、商標出願の登録の要件(例えば商標法第4条第1項第11号など)に導入されています。
商標の中には商号を兼ねるものがあります。代表的なのは“株式会社”などの語を含むものですが、その他にも“HOUSE”や“”ストア“など商号に類似の概念があります。こうした事例のうちでここでは“HOUSE”に関して紹介します。
A商号商標の類似の事例(“=”は類似の意味、“×”は非類似の意味) 事例1
[本願商標・引用商標]KITCHEN
HOUSE/キッチンハウス × キッチン
[事件の表示]昭和61年審判第17381号(商標出願拒絶審決不服)
[適用条文]商標法第4条第1項第11号
[本願指定商品]34類「プラスチックス、ゴムその他本類に属する商品」
非類似と判断される理由:
・本願商標は前半の「KITCHEN」及び「キッチン」の文字と後半の「HOUSE」及び「ハウス」の文字とは外観上まとまりよく一体的に構成され、観念上も軽重の差を見出すことができない。
・これより生ずると認められる「キッチンハウス」の称呼も格別上長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
・他に本願商標の構成中で「キッチン」の部分のみが格別に認識されるという事情は見当たらない。
事例2
[本願商標・引用商標]ALBIONHOUSE = ALBION/アルビオン
[事件の表示]平成3年審判第666号(商標出願拒絶審決不服)
[適用条文]商標法第4条第1項第11号
[本願指定商品]第17類「被服及びその他本類に属する商品」
類似と判断される理由:
・本願商標の構成中の「HOUSE」はハウスと発音され、家・店舗等を意味する一般に親しまれた英語であり、被服などを扱う業種において例えばジーンズを扱う店を「ジーンズハウス」、ランジェリーを扱う店を「ランジェリーハウス」などということから、「HOUSE」は「○○を扱う店」という程度の意味合いを認識させる。
・本願商標「ALBIONHOUSE」は全体として特別の意義は認め難い。
・本件の異議申立人の名称は、「株式会社アルビオン」である。
以上から、本願商標「ALBIONHOUSE」は全体として「アリビオンの店」或いは「アビリオンの商品を扱う店舗」という意味合いを認識することになり、「ALBION」の商標と同じ出所を表示するものと認識することが少なくないと判断するのが相当である。
[コメント] 一見したところ、”A+HOUSE” vs
“A”という類似した事案で正反対の判断が示された理由は主としてAの言葉の性質によるところが大きいと考えられます。2番目の審決が述べている通り、“HOUSE”の語は、
“○○(商品)を扱う店” 或いは “○○(事業者名)の店”
という概念を生じる可能性があります。Aという言葉が概念に馴染むものであるかどうかが問題なのです。
最初の事例の商標中の「KICHEN」は台所という一般名称でありますが、指定商品がプラスチックスやゴムであるため、「台所(或いは台所用品)を扱う店」という意味にはなりえないし、「キッチンという名称の事業者の店」という意味と解釈するのにも無理があります。
そして商標全体で冗長でもないし、キッチンのみ文字のサイズが大きいとか書体・色が違うなど外観上の一体性を破る条件もないのから、審決がいう通り、「『キッチン』の部分のみが格別に認識されるという事情」が見当たらないということになります。
これに対して、2番目の事例の「ALBIONHOUSE」のうちの“アビリオン””は事業者の名称として不自然ではありません。なぜならギリシア語では、名詞は男性名詞・中性名詞・女性名詞があり、中性名詞の語尾にはオンがつきます。とかく物理の分野ではギリシア語風の発音が多位ですが(例えばフェルミオンなど)、それが日常用語として定着し、会社名に使用される場合もあります(例えば“イオン”など)。さらに異議申立人の名称が“株式会社アリビオン”ですから、審判官が前記商標の意味を「アリビオンの店」と解釈したのは無理からぬところです。
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