体系 |
禁反言 |
用語 |
禁反言のケーススタディ2-2(商標の類似性・無効審判)/Raggazza事件 |
意味 |
禁反言の原則とは、一般に甲が乙に対して何らかの意思表示を行い、乙がその意思表示に応じて行動をとった場合に、後になって甲が前記意思表示と矛盾する行動をとることができないという原則を言います。
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内容 |
@禁反言の原則の意義
禁反言の原則は、商標出願人の審査等でした主張が認められて権利が成立し、その後にその主張と矛盾する形での権利行使をしたような場合に適用されることが一般的です。しかしながら、一旦権利が成立した後に無効審判の審理中に無効を免れるために主張した事柄に関しても適用される余地があります。ここではそうした事例を紹介します。
A禁反言の原則の事例の内容
事件の表示:平成25年(ワ)第127号
事件の種類:商標権侵害禁止等請求事件
問題の意思表示が行われた場面:無効審判の審理において
本願商標: RAGGAZZA(標準文字)
意思表示の内容:イタリア語は我国で一般に普及していないから、本件登録商標はイタリア語の「ragazza」を想起させるものではなく、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
意思表示に反する主張:被告標章「Ragazza」はイタリア語で「少女」を意味する単語であり、本件登録商標はそれに由来する造語であるから、いずれも「少女」の観念が生じる。
事件の経緯:
原告は、RAGGAZZA(標準文字)の商標登録(5170958号)を指定商品「被服、履物」(第25類)に関して有していますが、この商標は、イタリア語で“少女”を意味する単語「ragazza」のgの後にもう一つgを加えた造語です。
原告は、自己の商標権に対する登録無効審判において、商標法第3条第1項6号の該当性に関して前述の主張を展開していました。
原告は、「Ragazza」(被告標章)を自己の商標権の侵害として提訴しました。
裁判所の判断:
原告は、本件登録商標がイタリア語の「RAGAZZA」に由来する造語であり、これを想起させることを前提として、被告標章(Ragazza)が本件登録商標と類似する旨の主張をしている。他方で、原告は、本件登録商標の無効審判請求において、本件登録商標の無効を回避するために、本件登録商標が「Ragazza」(被告標章)と類似しない旨主張し、その旨の審判を得て本件商標登録の無効を回避しており、本件でも同旨の主張をしている。このような原告の対応(主張)は、禁反言の原則に照らし、許されないものというべきである。
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留意点 |
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