体系 |
禁反言 |
用語 |
禁反言とならない事例のケーススタディ2(商標)/ココ事件 |
意味 |
禁反言の原則とは、一般に甲が乙に対して何らかの意思表示を行い、乙がその意思表示に応じて行動をとった場合に、後になって甲が前記意思表示と矛盾する行動をとることができないという原則を言います。
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内容 |
@禁反言の意義
(a)禁反言の原則は、知的財産の分野では、出願人が審査で主張したことと、その主張により権利化された後に権利者が侵害訴訟で主張することとが矛盾してならないという形で現れます。
しかしながら、禁反言の原則は、商標出願と当該出願に係る商標権の侵害訴訟のように、一体的な関連性のある事件の間で適用されるべきであり、また商標の場合には、時間の経過によって一見矛盾する2つの主張も実は矛盾していないということに留意するべきです。
そうした事例を紹介します。
A禁反言の事例の内容
事件の表示:平成8年(行ケ)第269号
事件の種類:審決取消請求事件(請求棄却)
問題の意思表示が行われた場面:無効審判請求人である原告が過去に商標出願した商標(ココストア)の拒絶査定不服審判の手続
本件登録商標: 「ココ」の片仮名文字をゴシック体にて横書きしてなるもの(登録第2207833号)
引用商標:風見鶏風図形と幾何図形及び「ココストア」の仮名文字との結合した構成態様からなるもの(登録第1700566号)
意思表示の内容:「ココストア」から「ココ」の称呼、観念が生じることはないと主張した。
事件の経緯:
(a)被告は、「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品とする「ココ」の片仮名文字をゴシック体にて横書きしてなる登録第2207833号商標の商標権者である。
(b)原告は、「ココストア」本件商標の登録を無効とする旨の審判を請求したところ、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けたため、審決と取消を求めて提訴した。
(c)被告は、原告が、かつて、特許庁による「ココストア」の商標の拒絶査定に対し、「ココストア」から「ココ」の称呼、観念が生じることはないと主張したとして、本訴における原告の主張を、禁反言の原則に反するものと主張した。
(d)原告は、原告の特許庁に対する前記主張は、昭和54年になされたものであるところ、当時のココストアの店舗数は未だ44店に過ぎず、その店名が周知であるとは主張し得ない状況にあった。したがって、本件商標の登録査定がなされた平成元年10月当時(375店舗)とは状況が異なるものであり、そのことを考慮するならば、原告の本訴における主張が、上記特許庁における主張と矛盾するものとはいえない、と反論した。
[裁判所の判断]
(a)裁判所は、禁反言の主張の当否には言及せず、商標ココストアの周知性に関しては否定し、そして商標の外観・観念が著しく異なるので、商標法4条第1項11号に該当しないと判断しました。
・「原告は、『ココストア』なる商標は、一般需要者又は取引者にとって周知であるとし、これを前提として、『CoCo』をみる者は、原告の関連会社である株式会社ココストアの営業するコンビニエンスストアを示すものとして、容易に『ココ』の称呼を認識すると主張する。しかしながら、ココストアの店舗数は、本件商標の登録査定がなされた平成元年10月27日当時、わずか375店舗であり、この程度の店舗数では到底周知性を獲得したとはいえない。」
・「本件商標と引用商標の外観を対比するならば、両者は、その構成を著しく異にし、外観上、相紛れる余地のないものであることは明らかである。」
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留意点 |
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