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@結合商標の類否の意義
(a) 結合商標には、文字と文字との結合商標や図形と図形との結合商標もありますが、ここでは文字・図形の結合商標について考えます。商標の類否判断は、商標出願の審査での対応や商標権の効力を判断する際に必要となります。
(b)文字商標を構成する複数の要素が、これらを分離することが取引上不合理である程度に不可分に結び付いているときには、結合商標は全体観察するべきであり、分離して観察するべきではありません。
(c)不可分の結合の態様として、外観上の統一性がある場合と、観念上の統一性とがありますが、これは常にきっちりと割り切れるのものではなく、外観上の統一性があるが、観念的にも共通するというようなケースがあります。当然ながら、このような場合の方が結合の度合いは強いです。こうした事例をケーススタディします。
A結合商標の類否の事例の内容
[事件の表示]平成16年(行ケ)第229号(無効審判審決取消訴訟・請求棄却)
[判決の言い渡し日]平成16年11月29日
[商品区分・指定商品]第29類「食用魚介類(生きているものを除く)、加工水産物」、第30類「すし」、第31類「食用魚介類(生きているものに限る)、海藻類」及び第42類「飲食物の提供」
[本件商標の構成・登録番号] 商標登録第4438128号
デフォルメされた「魚」と「耕」の文字の左右に、頭部と尾びれを表す三角形状の図形を付加して、全体として左向きの魚の形状を表したもの ()
[引用商標]4432061号 魚の図形と「OKOH」の文字を組み合わせたもの (他3件)
[審決の判断]「ウオコー」の称呼をもってとらえられる場合があるとしつつも、最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁(以下「昭和43年最高裁判決」という。)を引用した上、両商標は、外観において顕著な差異があり、観念においても識別が可能なものであって、両商標から受ける印象を全く異にするものであるから非類似。
[裁判所の判断]
(a)最高裁 昭和39年(行ツ)第110号判決によれば、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである・・・商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、・・・取引の実情によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきでない」と判示されているところである。
(b)これを本件事案についてみれば、本件商標は、上記したとおり、デフォルメされた「魚」と「耕」の文字を用いて、極めて特徴のある魚の形状を描出してなるものであって、これに接する取引者・需要者は、そのユニークな発想と外観に強い印象を受け、特徴のある魚の形状をしたマークの「ウオコー」として記憶にとどめるものということができる。
そうすると、本件商標から「ウオコー」の称呼を生じ得ることは否定できないとしても、両商標は、外観において顕著な差異があり、観念においても識別が可能なものであって、両商標から受ける印象を全く異にするものであるから、取引の場において、本件商標を使用した商品及び役務が引用各商標を使用した商品及び役務とその出所について、誤認混同を生ずるおそれはほとんどないものとみるのが相当であるから、両商標は非類似と判断する。
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