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157 4条1項8号CS1/商標出願/不登録事由 |
体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標法第4条第1項第8号のケーススタディ1(著名な芸名) |
意味 |
商標法第4条第1項第8号は、他人の肖像・氏名等を含む商標について当該他人の承諾なく商標登録を受けることができない旨を定めています。
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内容 |
@商標法第4条第1項第8号の規定の意義
商標法は、商標出願と無関係の他人の人格権を保護するために、他人の肖像・氏名・名称、著名な 雅号・芸名・筆名等を含む商標を商標登録の対象から除外しています(商標法第4条第1項第8号)。
これら雅号・芸名・筆名などは、全くオリジナルに創作されることもありますが、縁起のよい言葉(地名や自然現象、人名など)をそのまま借用する場合もあります。後者の場合には、その言葉自体は著名であっても、それが前記他人の人格権と関係しているのかを俄かには判断し難い場合があります。
ここでは、そうした事例を紹介します。
A商標法第4条第1項第8号が適用された事例の内容
[事件の表示]昭和37年審判第976号
[事件の内容]拒絶査定不服審判
[審決日判決の言い渡し日]昭和38年10月31日
[商標]時津風
[指定商品]菓子一般
[結論]原査定を取り消す。本願の商標はこれを登録すべきものとする。
[審決理由]
原査定は、本願商標は「時津風」の文字を書してなるが、これは大日本相撲協会理事長の「時津風」の承諾を得ていないからこれを登録することができないものと認定している。
思うに本願の商標「時津風」は原査定が言うように大日本相撲協会理事長穐吉定次の年寄名である「時津風」を直感させるものであることを必ずしも否定するものではないが、
「時津風」の文字本来の語義は「潮の満ちくるときに吹く風」、「時節に順応して吹く風」
等であって(岩波書店発行、新村出編広辞苑1587頁)
かかる語義の点に鑑み、一般需要者は当該文字から大日本相撲協会理事長の「時津風」を連想するものであるものとは一概に言うことができない(中略)。
商標法第4条第1項第8号が他人の著名な芸名等を含む商標で、その他人の承諾を得ていないものについて、登録を拒否すべき旨を規定している理由は、このような商標が使用されていることにより、他人がこれを不快とし、その人格名声等を損傷せられたものであるとなすであろうことが社会通念上に認められるような場合について、人格権保護の見地から、その承諾を要するものとしているものにほかならない。
従って、本願商標を構成する「時津風」の文字のようにその文字自体が古くより特定の意義を有する語として世人に使用せられており、その採択の趣旨がかかる異議に基づくものであることが上記の如く明らかであるような場合においては、たとえ大日本相撲協会理事長穐吉定次が「時津風」なる年寄名を有するものとして著名であるとしても本願商標の使用により、その人格、名声を損傷せられたものであるとなすことは、経験則に照らし到底想像し得ないところであると言わざるを得ない。
[コメント]
本件のポイントは、たとえ形式的に商標法4条第1項第8号にいう「著名な芸名」に該当するものであっても、その芸名そのものが特定の語義を有する言葉を借用したものである場合には、当該他人の人格・名声等を損なうことにならないと判断される場合があるということです。
特定の意義を有する言葉を借用している場合でも、当該芸名の周知性が格別高いときには、本事例と逆の結論に至ることもあります。そうした事例を下記に説明します。
→商標法第4条第1項第8号のケーススタディ2(著名な芸名)
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