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158 4条1項8号CS2/商標出願/不登録事由 |
体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標法第4条第1項第8号のケーススタディ2(著名な芸名) |
意味 |
商標法第4条第1項第8号は、他人の肖像・氏名等を含む商標について当該他人の承諾なく商標登録を受けることができない旨を定めています。
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内容 |
@商標法第4条第1項第8号の規定の意義
商標法第4条第1項第8号は、他人の肖像・氏名・名称又は著名な雅号・芸名・筆名等を含む商標を商標登録の対象から除外する旨を定めています。
ここで「雅号・芸名・筆名」に関して“著名”という限定が付いているのは、これら雅号等は氏名や名称に比べて恣意的なものだからです。
例えば全く無名の芸人さんの芸名が商標の構成に包含されていても、その人と当該商標との間に関係があるとは誰も思わないでしょうから、人格権を害するという問題も起こらないのです。
伝統的な興行の分野では、その芸名として、縁起のよい言葉が好んで使われる場合があります。例えば相撲で言えば、“高砂”、“時津風”などです。こうした場合には、元の言葉との関係で、当該芸名が商標法第4条第1項第8号に該当しない場合もありますので、注意が必要です。
→商標法第4条第1項第8号のケーススタディ1(著名な芸名)
しかしながら、芸名自体としての著名の程度が高く、その言葉から特定の個人を連想することが通常であれば、やはり商標法第4条第1項第8号を適用することが合理的です。
そうした事例を紹介します。
A商標法第4条第1項第8号が適用された事例の内容
[事件の表示]昭和36年審判第2670号
[事件の内容]拒絶査定不服抗告審判
[審決日判決の言い渡し日]昭和38年8月27日
[商標]大鵬
[指定商品](旧38類)清酒
[結論]本件抗告審判の請求は成り立たない。
[審決理由]
本願の商標は階書体で「大鵬」の漢字を縦書きしてなり、第38類清酒を指定商品として、昭和35年3月16日その登録出願がなされたものである。
思うに本願商標の構成は上述のとおり普通書体で「大鵬」の文字を書してなるものであるがこれは本名納谷幸喜が大日本相撲協会の発行する番付に掲載されている、力士としてのしこ名「大鵬」と同一であり、「大鵬」と呼称すれば一般世人をして直ちに親しみ深い横綱大鵬を想起せしめるものであることは社会通念上相当とする。
従って本願商標はその相撲として横綱のしこ名を端的に表したものであると解さなければならない。してみれば本願商標は横綱大鵬のしこ名を採択したものであること明らかであり、しかもその表示に月承諾を得たものと認めるに足る立証方法の提出がないから、結局本願商標は旧商標法第2条第1項第5号の規定によりその登録は拒否せらるべきものと認める。よって主文の通り審決する。
[コメント]
インターネット辞書ウィキペディアによれば、“大鵬(たいほう)は、中国に伝わる伝説の巨鳥、鵬の別名。”であるとされています。
既存の言葉がそのまま他人の芸名として用いられるときには、必ずしも、他人の人格権を害することにならない可能性があります。
しかしながら、本件の場合には、横綱のしこ名としての“大鵬”の印象が、中国の伝説の大鳥である“大鵬”の印象よりも圧倒的に強いため、審決が前記のように本願商標の登録を認めなかったのは止むを得ないと考えます。
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