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@公信力の意義
(a)民法には、権利関係に関して公示の原則があります。
(b)公示の原則とは、排他的な権利の変動は登記・登録のような外界から認識できる表象手段を備えなければ完全な効力を生じないという制度です。
→公示の原則とは
(c)前述の表象手段は、通常は、真実の権利関係を表しているものであり、また、そうでなければ意味がないものです。しかしながら、たまたま真実の権利関係を伴っていない場合に、この外形を信頼して取引をする者に対し、真実の権利関係が伴っていると同様の法律的効果を生じさせるのが公信力です。
A公信力の内容
(a)特許法は、特許出願人が開示した発明を社会に公開し、産業の発展を図る代わりに、特許出願人に対して独占排他権である特許権を付与します(特許法1条、66条)。
(b)この特許権の変動に関して、特許法第98条第1項に次に様に記載されています。
「次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一 特許権の移転(相続その他の一般承継を除く。)…(後略)」
(c)同条が「登録をすれば、効力が生ずる」と言わずに、「登録をしなければ効力を生じない。」と規定している理由は、登録に公信力を認める意味ではないということです。
例えば甲から乙に特許権の移転がされたことの契約やその他の法律的な行為が全くないのにも関わらず、偽造の譲渡証などを添付した登録申請により移転の登録があったとしても、その移転の登録によっては特許権の移転の効力が生ずるものではありません。
(d)実質的な要件が欠けていても登録という外形を表示した法律関係を信頼して取引等をした者を保護しようとするのは、公信力の手法ですが、我が国では、登録制度はいうに及ばず、登記制度においても公信力は認められていません。
→公信の原則とは
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