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①拡張解釈の意義
(a)拡張解釈においては、通常、狭い概念を広く解釈します。
(b)立法者の意図を、条文中に細かく書き込むと、条文が過度に冗長となってしまいます。これを避けるためにシンプルな規定振りに成っているときに、その条文の立法趣旨を汲んで用語の意味を広く解釈することがあります。
(c)また条文が制定されてから、長い時間が経過し、社会の事情の変化により、条文の用語の意味を拡張しなければならなくなる場合もあります。
②拡張解釈の内容
ここでは特許法関連の書籍から拡張解釈の例を取り上げて説明します。
(a)特許法第17条の2(明細書等の補正)には、「特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面についての補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項…において準用する場合を含む。…)の規定による通知(以下、この条において「拒絶理由通知」という)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。(後略)」
と記載されています。
この規定に関して工業所有権逐条解説には、“‘最初の拒絶理由’とは、原則として、特許出願人にはじめて指摘する拒絶理由を通知するものを言い、第1回目の拒絶理由はもとより、第2回目の拒絶理由であっても、最初の拒絶理由に対して補正がなされなかった請求項請求項などに対して、はじめて通知する拒絶理由を通知する拒絶理由を含むものは、最初の拒絶理由である。”旨が解説されています。
要するに、最初の拒絶理由通知を特許出願人を発する段階では、請求項1の発明にのみついて新規性・進歩性を否定する先行技術文献が見つけられており、特許出願人がこれに対して補正書・意見書で対応したところ、その後に第1回目の拒絶理由通知と無関係であった請求項2に新規性・進歩性を否定する先行技術文献が見つかった場合には、第2回目の拒絶理由通知でも最初の拒絶理由として扱うということです。最後の拒絶理由通知を発することになると、最初から請求項2に関して先行技術を見つけていた場合と比較して不公平であり、特許出願人に酷となるからです。
→最後の拒絶理由通知とは
“最初の拒絶理由”に第2回目の拒絶理由を含めるのは概念の拡張であるので、拡張解釈に該当します。
(b)特許法第17条の2第5項には、「前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号、第四号に掲げる場合(…)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第36条第5項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)
(後略)」
と規定されています。
この規定に関して、工業所有権逐条解説には、「産業上の利用分野の同一とは、技術分野が一致する場合のほか、技術分野が密接に関連する場合も含まれる。」と解説されています。“同一”という文言に“密接に関連するもの”を含めるのは、国語的な意味の拡張であり、これも拡張解釈の一種と理解できます。
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