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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1056   

もちろん解釈/特許出願/新規性・進歩性

 
体系 法律全般
用語

もちろん解釈

意味  もちろん解釈とは、ある条文の規定の立法目的や趣旨等から見て、明文の規定はなくても、それと同趣旨の規定があると解釈することが当然の場合の解釈をいいます。


内容 @の意義

(a)“もちろん解釈”とは、条文に記載されていない事柄に関して、法律の趣旨に照らして当然のこととして法律解釈の適用範囲に含まれると解釈する手法です。

(b)“もちろん解釈”は、類推解釈の一種です。

Aの内容

(a)我が国の特許法は、精緻に出来ており、類推解釈やもちろん解釈が必要となるような規定振りの条文はあまりありません。そこで条約類からもちろん解釈の例を挙げます。

(b)特許独立の原則(パリ条約4条の2)には、“同盟国の国民が各同盟国に出願した特許は、他の国(同盟国であるかどうかを問わない)において同一の発明について取得した同一の発明について取得した特許から独立したものとする。”と規定されています(→特許独立の原則とは)。

(イ)“同一の発明について”という文言に関して、ボーデンハウゼン教授著「注解パリ条約」には「独立性は、『同一の発明』について得られた特許に関してだけ規定されている。もっとも、同一でない発明について得られた特許に関して、独立性は当然に適用される。」と記載されています。

(ロ)特許独立の原則は、例えば同盟国Aで特許出願された発明についてパリ条約優先権を主張して同盟国Bで特許出願され、同盟国Aの出願に対して付与された特許が、後に新規性・進歩性などの欠如により無効となったとしても、特許の要件(新規性・進歩性など)の具体的要件(時期的な基準、客体的基準、審査の具体的運用)は国ごとに異なるのだから、そこを無視して同盟国Aの特許を無効として同盟国Bの特許を無効とするのは酷い話だ、という趣旨から、導入されたものです。

(ハ)優先権制度が出発点となっているので、優先権の主張の条件である“同一の発明について”が適用の条件に入っています。

(ニ)しかしながら、同一の発明の概念は各国毎に違うので、同一性が認められないケースもあります。同盟国Aの特許発明と非同一の発明に付与された同盟国Bの特許を無効とするのは、同一の発明に付与された特許を無効にするよりも酷い話であり、こうしたケースにも本原則は“もちろん”適用されるべきであると解釈されます。


留意点 (a)特許法第107条第2項(特許料)には、「前項の規定は、国に属する特許権には、適用しない。」と規定されており、国が特許権者である場合(或いは国が特許出願人であって特許査定を受けた場合)には、特許料を納付する必要がないとされています。

 この規定では、納付を免除されているのは、“国”に限定されていますが、都道府県などは、特許料の納付の義務を免れません。

 本条は、“国庫内の資金循環を防ぐ観点”から規定されたものであり、国に準じる公的な存在であっても、別個の財政を有する都道府県は適用外なのです。

特許法第17条の2には、明細書等の補正に関して、「前項に規定するもののほか、第1項各項目に掲げる場合において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定されている発明とが、第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」と規定されています。

 この規定に関して、特許法逐条解説には「『拒絶理由において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明』とは、新規性・進歩性等の特許性の判断が示された発明を言う。したがって、新規性・進歩性等の特許要件についての判断が示されなかった発明はこれに含まれない。」と説明されています。

 これより、規定の命題と逆の命題(審査官が新規性・進歩性の判断を示さなかった発明を補正する場合には、補正前の発明と補正後の発明とが単一性の要件を満たす一群の発明に該当する必要はない)を導くことは反対解釈です。

(b)特許法第106条には、「故意又は過失により特許権者又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害倍賞の請求により、損害倍賞の請求に代え、または損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。」と規定されています。

 これより、“侵害が善意でかつ過失なく行われたときは信用回復の措置を命ずることができない。”と解するのは反対解釈です。



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