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@特許表示の意義
(a)特許出願をする意味は、発明公開の代償である特許権を取得し、その独占排他的効力を利用して市場における独占排他的利益を獲得することです。この独占的利益を確実なものにするためには、特許権者も独占排他的権利の存在を同業者らに対して明らかにし、自分の権利は自分で守ることを心掛ける必要があります。
(b)特許表示は、特許に係る物が特許の対象であることを明示し、権利侵害を未然に防ぐ効果を有するものです。
(c)こうした理由から、特許法第187条は、「特許権者、専用実施権者、又は通常実施権者は特許に係る物に特許表示を付するように努めなければならない。」と規定しています。
(d)なお、“努めなければならない。”という文言から判るように、同条は訓示規定とされています。
旧法(大正10年法)の制定当初は、特許表示をしない特許権者の権利行使(損害賠償請求権の行使)を制限する法制をとっていた時期がありましたが、
国際調和の観点から問題を指摘されたこと、
特許表示を付さないからと言って特許権者に格段の不利益を課する程のこと
から、そうした制約は削除され、現在に至っています。
A特許表示の内容
(a)“特許に係る物”とは、物の特許発明におけるその物、或いは、物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物をいいます。
(b)特許表示の具体的な表示方法は、次の通りです。
・物の発明→“特許”の文字+特許番号
・“方法特許”の文字+特許番号
(c)特許に係る物でない物や包装などに対して特許表示又はこれと紛らわしい表示をすると、虚偽表示の罪となります(特許法第188条)。
B特許表示に関する条約及び外国の法制
(a)工業所有権の保護に関するパリ条約5条Dには「権利の存在を認めさせるためには、特許の記号若しくは表示…を産品に付することを要しない。」と規定されています。
この規定に関して、ボーデンハウゼン教授著「注解パリ条約」には、本規定は“権利の存在を認めさせる”ための条件として特許表示をする必要はないといっているだけなので、特許表示をしないことを理由として保護を縮減することは条約違反ではないとされています。
(b)米国特許法第287条は、特許権者がpatent marking
(特許表示)を怠ったときには権利行使が制限される旨が規定されています。 →Patent marking (特許表示)
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