パテントに関する専門用語
  

 No:  1091   

米国商事統一法典CS/特許出願の要件(外国)/進歩性

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

米国商事統一法典のケーススタディ(特許権の譲渡)

意味  米国商事統一法典(Uniform Commercial Code)とは、アメリカ合衆国の商事のモデルに関するルールであり、各州がこれを採用することで州法の一部となるものです。


内容 ①米国商事統一法典の意義

 米国法の基本は各州の立法府が定めた法律(州法)ですが、特許に関する事柄、例えば特許出願の手続(明細書・請求の範囲・図面の記載方法)、或いは新規性・進歩性などの特許出願の要件が、仮に各州毎に異なるとすると連邦国家としての体をなしません。そこで連邦法である特許法が規定されています。

 しかしながら、事柄の性質によっては、特許に関する問題であっても、州政府が決めた法律(米国商事統一法典)が優先されることがあります。

②米国商事統一法典の事例

(a)事案の概要(Sky Technologies LLC v. SAP AG, et al., No. 08-1606)

 この事案は、発明者(特許出願人)が譲渡した特許の権利が譲渡→担保権の設定→担保権の実行→譲渡を繰り返して、結局、発明者を代表者する会社へ買い戻され、その特許権に基づいて被告を提訴したところ、被告が担保権の実行による権利の移転は、特許法に定める譲渡の手続(譲渡証の提出)を満たさないから、原告は当事者適格を有しないと主張したものです。



(b)判決要旨

・特許侵害の損害賠償を請求する者は、当事者適格がなければならない。

・当事者が特許に基づく実質的な一切の権利を認められている場合には、当事者が権利を移転した取引経緯をどのように位置付けるかにかかわらず、かかる当事者は、法律上の権原、すなわち当事者適格を有するものと考えられる。

・特許権の譲渡は、連邦特許法が要件とするところでは、書面によらなければならない。
譲渡証(Assignment)とは

・控訴人は、本件特許を移転したとする書面が存在しないから、被控訴人は、法律上の権原を取得しておらず、当事者適格を有していないとする。

・しかしながら、譲渡証による譲渡が、特許の所有権移転の手段として、唯一の方式とはならず、先例は、書面のない法律の運用による特許所有権の移転を認めている。

・本件特許は、マサチューセッツ統一商事法典の規定に従い、担保権の実行が行なわれて、担保権実行後、有償の譲受人は、担保物に関する債務者の権利を包括的に受け取るため、特許の所有権は承継されるものと認められる。

・控訴人は、先例は正当であるが本件に拘束力はないとして、先例における法律の運用による所有権を承継する自然人などは、特許法第154条の相続人であって、相続人または承継人は、本件においては存在しないと主張している。第154条は、特許の所有権を上記三つのカテゴリーの個人に限定しているわけではなく、この文言は、特許の所有権移転について具体的に言及していない以上、この議論は説得力がない。

(c)事実関係

Jeffrey Conklinは、ネットワークを通じた反復・多変量ネゴシエーションのシステム(System for iterative, multivariate negotiations over network)と称する発明他5件に関してそれぞれ特許出願するとともに、自ら設立した会社TradeAccess,Inc.(後にOzroと改称)に特許出願を譲渡し、これらに対して特許6,141,653号が付与された

・2001年4月2日Ozroは、Silicon Valley Bank(以下SVBと略称する)に対して、「担保に関して現在存在しまたは将来取得する譲与者の一切の権利、権原、及び権益に関する担保権」を認めており、この担保の対象に前記特許が含まれる。

 本契約は、「発明、特許を受ける権利(rights to apply for patent)、特許、特許出願及び、全世界の一切の譲与者の権利・権原及び権益であって前記特許及び特許出願に限定されないものに関して、第一順位の先取特権」を譲与するものであり、同日にPTOに提出された。

・2001年4月3日、Ozroは、Cross Atlantic Capital Partners, Inc.(以下XACPと称する)と同様に担保権設定契約(以下、XACP Agreement)をXACP Entitiesのために締結しており、この担保の対象には前記特許が含まれる。

・2002年12月、SVBは、その担保物権について先にSVBによって所有された「一切の権利、権原、及び権益」をXACPに与えるノンリコース契約によりXACPに譲渡した。この移転はPTOに登録された。

・2003年2月18日、XACPは、Ozroの自らの貸付債務が不履行になったために本件特許に担保権を行使し、差押通知をOzroの債権者、発明者、および代理人の全てに発送した。

・2003年6月4日、Conklinが設立したSky Technologies LLC(以下Skyと略称する)は、XACPに対して、前記特許権を買い戻すことに関して合意契約に署名した。

・2006年10月17日、Skyは、特許侵害訴訟をSAP AGとSAP America, Inc.(以下SAPと略称する)に対して、テキサス東部地区連邦地方裁判所に提起した。
 

留意点

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