体系 |
権利内容 |
用語 |
生産方法の推定 |
意味 |
生産方法の推定とは、物を生産する方法の発明について特許がされており、その物が特許出願前に日本国内において公然知られたものでないときは、その物と同一の物はその方法により生産されたものと推定することです(特許法第104条)。
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内容 |
①特許法では、物の生産方法の発明の特許権の効力は当該方法により生産された物に及びますが、その侵害の事実は原則として特許侵害訴訟の原告がしなければなりません。
②しかし、一般に方法の発明の実施は物の発明と異なり、実施をしたことの痕跡が残りにくいので、侵害の事実の立証が容易ではありません。
③そこで上記推定により立証責任の転換を図ることにしました。 →立証責任の転換とは
④生産方法の推定は、「その物が特許出願前に日本国内において公然知られたものでない」ことが条件となります。
(a)特許出願前から公然知られた物にまで立証責任を転換すると、逆に善意の実施者(特許出願の方法発明以外の方法でその物を生産した者)も自分の生産物がどのような方法で生産されたかを記録しておくなどしておかなければ特許侵害を免れないことになり、その者に酷、特許権者には過保護となるからです。
(b)何故“日本国内で”公然知られていた場合に限られるのかと言えば、平成11年迄は新規性の規定の公知・公用の地域的判断基準として国内主義をとっていたからです。新規性の規定の規定に併せて“日本国内又は外国において”と改正することも可能でしたが、そうすると特許権者側の立証責任の負担が格段に重くなるため、そのままになっています。
⑤生産方法の推定の規定は、侵害罪の判断にも適用されるものと解されます。
⑥生産方法の推定規定は、補償金請求権(出願公開後特許権設定前の特許出願に係る発明の実施に対して補償金を請求できる権利)に援用されます。
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留意点 |
パリ同盟国への特許出願Aに基づいてパリ条約優先権を主張して日本へ特許出願Bをした場合に、生産方法の推定規定の「特許出願」とは第1国出願(特許出願A)であると解されます。すなわち、特許出願Bの前に生産方法に係る物が公知となったとしても、特許出願Aの時点で公知でなければ、その物は当該生産方法で生産されたものと推定されます。それにより、特許出願Aの後の事情であって特許出願Bの前に生じたものにより特許出願Bを不利に取り扱わないという優先権の趣旨に沿うからです。
参考図30
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