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@機械の分野では、例えば先の特許出願に係る発明が“金属製のコップ”、後の特許出願の発明が“鉄製のコップ”であり、効果が“従来のガラス製のコップに比べて割れにくい。”ということであれば同一発明であると認定しても異議が生ずることはないでしょう。しかし物の構造に基づく効果の予測が困難な技術の分野、主に化学の分野では事情が違います。
A古い判例では先の特許出願に係る発明と後の特許出願に係る選択発明との関係が曖昧ですが、後に化学分野の発明の開示に関して次のような判例が出ています。
A.特許法第104条の適用に関して、化合物発明が完成したと認められるためには、化合物の製造可能性と有用性とにつき現実に確認されることを要するとした事例(平成2年(行ケ)243号)。
B.特許出願に係る発明の進歩性の判断に関して、引用文献に特許発明の共重合体を包含する一般式及び近似した構造の実施例が記載されていても発明の共重合体は開示されていないとした事例(平成18年(行ケ)10346号)
B特許制度の趣旨は特許出願により開示させた有用な新規発明を公開する代償として特許権を付与することであり、発明特定事項の全部又は一部を上位概念的に表現している先行発明が存在していたからと言って、直ちに後の特許出願に係る発明を当業者が利用できる訳ではないので、上記の解釈が妥当と考えられます。
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