体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
シュリンクラップ契約(Shrink-wrap contract) |
意味 |
シュリンクラップ契約とは、プログラムの記憶媒体の包装を開封すると当該条項に同意したものとみなされる旨の使用許諾条項に基づく契約を言います。
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内容 |
①シュリンクラップ契約の意義
(a)例えば市販のパッケージプログラムの外箱に添付される使用許諾条項に前述のシュリンクラップ契約が含まれている場合があります。
(b)シュリンクラップ契約の条項の中に、例えばライセンサーの責任の責任を制限する旨の条項(→責任制限条項とは)があり、この種の契約の有効性を巡る裁判例が米国などで存在します。
(c)シュリンクラップ契約は、1980年代から1990年代に盛んになった契約方式であります。もともとはパッケージソフトの箱の中に約定書(term)が入っており、“支払いは今、約定は後”(pay
now, term later)というものであったため、パッケージを破る前には約定の内容が判らないとして問題になる可能性がありました。
こうした問題を回避するため、パッケージの外に約定書の内容を記載し、パッケージを破る前に内容を読むことができるようにソフトの提供者側が配慮する場合もあります。
(d)シュリンクラップ契約と類似の概念としてクリックラップ契約があります。今日では、ソフトはパッケージで買うよりもコンピュータ上でダウンロードされることが通常であり、これに対応した契約の内容です。
→クリックラップ契約とは
②シュリンクラップ契約の内容
(a)例えばM.A.Mortenson Co.被告 Software
Corp.を紹介します。
・建築工事入札補助ソフトを購入した原告がプログラムのバグにより意図した入札額より低額で入札することになり、損害を生じたとしてソフトの開発者である被告を訴えた。
・シュリンクラップ契約において、プログラムのバグによる原告の損害に対する被告の責任はライセンス料まで低減される旨の責任限定条項が含まれており、同意しなければ返品できる旨が記載されていた。
・州裁判所は、同州が採用している統一商事法典の2-204において“物品の売買契約は合意を証するのに足りる方法によっても成立し、その締結の時点が確定できない場合でも契約の成立を認定できる”旨の定めがあることを根拠とし(→統一商事法典とは)、そしてライセン契約の条項はパッケージの様々な場所に書いてあるから、原告はそれを読む機会があり、実際にそれを読んだか否かは問題にならないとしてシュリンクラップ契約が成立していると判断しました。
→ProCD事件とは
③日本での取り扱い
(a)日本ではプログラムは、著作権法で保護されている他に、特許法において特許出願の対象となり、物の発明として保護されますが、いずれにしても、これまでのところ、シュリンクラップ契約の裁判例はないようです。
(b)日本では、民法526条に
・隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する(1項)。
・申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(2項)
と定められており、シュリンクラップ契約が“承諾の意思表示と認めるべき事実”と認定されるかどうかの問題となります。
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留意点 |
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