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1116 要素の錯誤CS2/特許出願/人工大理石事件 |
体系 |
民法 |
用語 |
要素の錯誤のケーススタディ2(人工大理石事件) |
意味 |
人工大理石事件は、ライセンス契約の対象に関する特許出願・実用新案登録出願・意匠登録出願(以下「特許出願等」という)がライセンシーの期待に反して権利化に至らなかった場合に要素の錯誤による契約の無効が主張された事案です。
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内容 |
①人工大理石事件の意義
特許出願等の対象に関して独占的実施権のライセンス契約が締結された場合に、ライセンシーとしては独占排他権が付与され、その権利の下で実施ができることを期待することが通常であります。しかしながら、契約の内容には様々な要素があり、ラインセンサーの利点として、ライセンサーが提供するノウハウにより有利に実施できるというようなことも考えられます。特許出願等が拒絶され、権利にならなかったとしても、事前にその結果が分かっていたら、ライセンサーはライセンス契約をしなかっただろうと極め付けることはできません。
そうした観点から、“特許出願等が登録になると誤信したのであり、拒絶になるのなら契約は無効だ”という主張(要素の錯誤による無効)を裁判所で展開しても裁判所としては容易に主張を認めてくれないという傾向があります。そうした事例を紹介します。
②仏具人天蓋事件の内容
[事件の表示]昭和51年(ネ)第1548号請求異議控訴事件
[判決の言い渡し日]昭和52年7月20日
[事件の経緯]
(a)乙は、訴外丙に対して、乙が特許出願等をしている人工大理石の製造販売について次の条件で独占排他権を締結しました。
・毎月20万円と総売り上げ額の6%を支払うこと。
(b)丙は甲に対して資金援助を求め、甲は丙に代わって毎月20万円等の支払いも行っていたが、丙の倒産後に丙の事業を引き継ぎました。
(c)甲は、乙との間で次の条件で独占的製造販売権を買い取る契約を締結しました。
・一時金として500万円を支払うとともに毎月25万円を支払うこと。
・製造の秘密を第三者に漏らしたときには違約金を支払うこと。
(d)人工大理石の製造事業は乙の技術指導により下請け数社が行いましたが、本件人工大理石そのものにも欠点があったために売れ行き不振となり、廃止されるに至りました。
(e)人工大理石の特許出願・実用新案登録出願・意匠登録出願はいずれも設定登録には至りませんでした。
[裁判の経緯]
(a)甲は、主位的主張として要素の錯誤による契約の無効を、予備的主張として一部の金員の支払い義務がないことを主張して裁判を起こしました。
→主位的主張とは
(b)地裁で甲が勝訴したために、乙が控訴しました。
(c)控訴審では、甲の主位的主張を退けたものの、予備的主張は認めたため、乙の控訴は棄却されました。この記事では、主位的請求の部分を取り上げて説明します。
[裁判所の判断]
(a)裁判所は、次のように判断しました。
・甲が人工大理石の製造・販売の独占権を獲得するために権利金500万円を支払い、製造方法の秘密を漏らすことに関して高額の違約金が課されているのは、特許等の出願中であった大理石に関する無体財産権が近日中に確実に発生すると考えており、そのことを契約の重要な内容としていたのではないか、と考えられないでもないが、
その反面、 甲が本契約の前から大理石の製造販売に協力しており、相当の知識を有していたとみられること、
多額の権利金及び違約金の支払いを約してあえて丙よりも不利な契約の締結に応じたことは、
甲の自らの判断で本件人工大理石の製造・販売の将来性に着目し、進んで契約の締結に及んだものと推認され、
無体財産権の発生がない場合には契約を締結することがなかっただろうと認められる事情はなかったものと認めるのが相当だから、要素の錯誤の主張は認めることができない。
[コメント]
本事例では、特許出願等が権利となることが、甲が乙と契約を締結する動機になっていたことを推察させる事情はあるにせよ、無体財産権の発生がなければ甲は契約に至らなかっただろうと裁判所に納得させるには至りませんでした。動機の錯誤の主張は、その動機を当事者の一方が明示し、それを相手方も知っていたというような場合でなければ認められにくいと考えます。
→要素の錯誤のケーススタディ1(仏具人天蓋事件)
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留意点 |
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