体系 |
民法 |
用語 |
後法優先の原則 |
意味 |
後法優先の原則とは、同一の法形式の間では後法が前法に優先して適用される原則です。
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内容 |
@後法優先の原則の意義
(a)“後法優先の原則”は、“後法優越の原則”とか、“後法は前法を破る”とかいう形で表現されることもあります。
(b)要するに、前の法律で至らないところがあるので後の法ができたのだろうから、同一の事柄に関して前法と後法とで矛盾することが規定されていれば、後法を優先することが立法者の意図に沿うだろうという考え方に基づく法適用順位の判断手法です。
→法の適用順位の決定規範
(c)こうした考え方は、立法者の意図を推定するのに役立つとしても、立法者の意図を汲み取る根拠としては強固なものではなく、どういう場合にも常に当てはまるとは言えません。従って他の判断手法が適用できる場合には、そちらが優先します。
・“同一の法形式の間で”というのはそういう意味であり、法律と法律との間、政令と政令との間でしか後法優先の原則は適用されません。
→政令とは(特許法の)
・憲法と普通の法律とが矛盾する場合、或いは、法律と政令とが矛盾する場合には、制定された前後を問わず、前者が優先されます。憲法は国の最高法規であるから、政令は法律を補完するために規定するものに過ぎないからです。
・また一般法と特別法とが矛盾する場合には、制定時期の前後を問わずに、特別法が優先します(→特別法優先の原則)。特別法は特別なケースに適合するように特に定められた法規だからです。
例えば民法の意思表示の規定が改正されても、改正前から存在する手形法の規定(手形であることを認識して署名すれば手形行為は有効に成立し、民法の一般規定である95?96条を根拠とする無効の主張はできない)の解釈には影響しません。
A後法優先の原則の内容
(a)“後法は前法を破る”はローマの法学者が提唱した概念のようですが、日本人は几帳面に法律同士を調整したりして、出来るだけ矛盾を回避しようとするため、後法優先の原則が適用される事例はあまり見当たりません。
大抵は上位法令優先の原則や特別法優先の原則で対応できてしまうのです。
例えば特許法では特許出願などの手続の期間の規定(同法第3条)を定めており、これは民法の期間の規定と異なる点がありますが、特許法は民法の特別法であるので、規定の前後を問わずに特許出願その他特許に関する手続に関しては特許法が優先します。
(b)日本が加入している新旧条約同士が矛盾しているような場合には、後法優先の原則で調整する余地はあるかもしれません。
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留意点 |
後法優先の原則とは直接関係がありませんが、特許出願などの実務で注意しなければならないのが、いつの改正法を当てはめれば良いかという問題です。
特許法は幾度も改正されているので、特許出願が行われた時期から、適用される改正法を特定する必要があります。 →特定の特許出願・特許権への改正特許法の適用の判断
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