No: |
1197 使用者等が受けるべき利益/特許出願/職務発明 |
体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
使用者等が受けるべき利益 |
意味 |
使用者等が受けるべき利益とは、使用者等が契約・勤務規則・その他の定めにより職務発明について特許を受ける権利を原始的に取得し、承継し、特許権を承継し、或いは専用実施権の設定(特許出願の段階で仮専用実施権の設定を受け、設定の登録により専用実施権の設定を受けたものとみなされた場合を含む)を受けた場合に、使用者等が受けることとなる利益をいいます。
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内容 |
①使用者等が受けるべき利益の意義
(a)特許法第35条は、今日の特許出願の対象となる発明の大半を占める職務発明を奨励する趣旨から企業側(使用者等)と発明者側(従業者等)との利益の調和を図ることにしています。
(b)具体的には、両者の間に別段の定めがない場合には、発明者である従業者等に特許を受ける権利(特許出願をする権利)を原始的に取得させるとともに、使用者等には、無償の法定通常実施権を付与しています(特許法第35条)。
(c)そして使用者等がそれ以上の保護を求める場合には、職務発明について別段の定め(一般に職務発明規定という)をおいて
・特許を受ける権利の原始的取得
・特許を受ける権利の予約承継
・特許権の予約承継
・専用実施権の設定(仮専用実施権の設定によるものを含む)
をすることができることを認める反面、この場合には、従業者等が使用者等から相当の利益を受ける権利を有すること(第4項)、この相当の利益は不合理なものであってはならないこと(第5項)、不合理か否かの判断において“その発明について使用者等が受けるべき利益の額”を考慮するべきこと(第5項)を定めています。
(d)従って“使用者等が受けるべき利益の額”とは、職務発明についてもともと法律で使用者等に保障されている利益(法定通常実施権)以上の利益を使用者等が受けることを職務発明規定で定めたときに生ずるものであり、
その職務発明規定により使用者等が得た利益と、職務発明規定を定める前の状態に使用者等が得た利益の差分
と考えることが合理的です。
その利益の差分の見返りとして従業者に報酬(相当の利益)が与えられるからです。
②使用者等が受けるべき利益の内容
(a)例えば平成24年(ワ)第2689号においても“その発明により使用者等が受けるべき利益の額”の額に関して次のように判示しています。
「使用者等は、職務発明について特許を受ける権利等を承継しない場合でも、当該特許権について無償の通常実施権を取得すること(法35条1項)からすれば、同条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは、使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の全体をいうものではなく、使用者等が被用者から特許を受ける権利を承継し、当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得、その結果、実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益の額、いわゆる「独占の利益」の額をいうものと解される。」
→独占の利益とは
(b)さらに上記判決は次のように述べています。
・職務発明について第三者に実施を許諾した場合の実施料収入は独占の利益になる。
・特許権者が自ら実施した場合の独占の利益は、超過売上高に仮想実施料率を乗じて得た金額となる(→仮想実施料率とは)。
なお、超過売上高とは他社に対して職務発明の実施を禁止できることにより、他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較して、これを上回る売上高をいいます。
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留意点 |
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