No: |
1203 Smallest salable patent
practicing unit/特許出願 |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Smallest salable patent practicing unit |
意味 |
Smallest salable patent practicing
unit(特許が実施された最小販売可能ユニット)とは、米国特許訴訟において損害額の算定する際に証拠法上で補助的に用いられる概念であって、特許部分を含み、販売することが可能な最小のユニットを言います。
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内容 |
①Smallest salable patent practicing unit
の意義
(a)米国特許法は、特許出願の要件や特許権の内容に関して規定していますが、特許侵害訴訟での損害賠償に関する細かな事柄(損害賠償額の算定方法など)に関しては、判例に委ねられています。
(b)技術革新が進み、多種多様な技術が特許出願される今日において、一つの製品に多数の特許が使用されていることも少なくありません。他人の製品に自己の特許を利用する部品が無断で使用されている場合には、どうやって損害賠償額を算定するのかが問題と成ります。
算定手法の一つとして特許権者と侵害者との間で特許ライセンスの交渉が行われたものと仮定して(→Hypothetical
negotiationとは)、交渉で設定されたであろう合理的なライセンス料を賠償額と考えるという方法があります。
(c)エリクソン対D-Link 事件(Ericsson,Inc. v. D-Link Sys. Inc.,et al., 773
F.3d 1201)において、連邦巡回控訴裁判所は、この問題に関して次のように説諭しました。
“多数の部品からなる製品が関係する事案において、ロイヤルティベースとロイヤルティ率の最終的な組み合わせは、侵害を構成する機能の価値を反映したものでなければならず、それ以上の要素を取り込んではいけない。”
そうでなければ(特許権者が)奪われた価値("value of what was taken"
)以上のものが賠償額に含まれることになるからです。
これをEntire market value
ruleと言います(→Entire market value ruleとは)。
(b)他方、損害賠償の証拠は信頼性に足るものであることが必要です。例えば特許権者の部品の特許ライセンスを第三者に許諾している場合には、これを参考として合理的なロイヤリティを算定することができるのでしょうが、信頼に足る証拠が存在しない場合も考えられます。
(c)こうした場合に、実際に販売されている最終製品の価値に関する証拠に依拠して、“侵害を構成する機能の価値”を算定することが禁止されているわけではありません。
その場合には、ロイヤリティ率を大幅に下げるなどして調整すれば良いからです。
このようにロイヤリティ率の算定の証拠として使われる最終製品を、Smallest salable patent practicing
unitと言います。
②Smallest salable patent practicing unitの内容
(a)連邦巡回控訴裁判所は、前述のエリクソン 対 D-Link 事件において、Entire market value rule
に関して次のことを述べています。
(イ)侵害を疑われている物品が特許された機能と特許されていない機能の両方から構成される場合、算定するべきなのは特許された機能による付加された価値であり、その価値を把握することが必要となる。
(ロ)エコノミストは上記の価値算定をいくつかの方法で行うことができる。
・ロイヤルティベースの選定を注意深く行うことによって、特許された機能によって付 加された価値が反映されるように手法
・ロイヤルティ率を調整することで特許された機能以外の機能の価値を割り引く手法
・これら手法の組み合わせがありうる。
(ハ)重要なのは、合理的なロイヤルティの最終的な額は、特許発明が最終製品に付加した価値の合算値に基づいたものでなければならないということである。
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留意点 |
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