体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
自由発明 |
意味 |
自由発明とは、従業者・法人の役員・国家公務員及び地方公務員(以下「従業者等」という)がした発明であって、その性質上使用者等に属しないもの、或いは発明をするに至った行為が使用者等における従業者等の現在又は過去の職務にしないものを言います。
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内容 |
@自由発明の意義
(a)企業に雇用される技術者が創作した発明に関して、誰が特許出願をすることができるのか等の問題を考えることは、産業政策上意義のあることです。
何故なら、今日、特許庁に対して特許出願される発明の大部分は、他人に雇用される技術者によってなされるからです。
この問題を民法の観点から見ると、民法623条の「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」との規定により、労働の成果である発明は使用者である企業に属するものである、と企業側からは主張できます。それが嫌であれば、従業者はそれと異なる条項を予め締結することを要求できた筈である、ということもできます。
しかしながら、技術者である従業者は、技術は専門であっても法律に疎いことが多いため、こうした法律論だけでは納得が得られにくいという事情があります。そして、創作の担い手である発明者を冷遇することにより、創作意欲の減退を招くとしたら、これは企業側にとっても良いことではありません。
こうした観点から、特許法は、いわゆる従業者発明を、下記の(イ)及び(ロ)の条件を満たす職務発明とそれ以外の自由発明とに分け、
(イ)その性質上使用者等の業務範囲に属すること
(ロ)発明をするに至った行為が使用者等における従業者等の現在又は過去の職務であること
そして前者に関しては、特許を受ける権利(特許出願をする権利)の原始的取得、特許を受ける権利や特許権の予約承継等を定めた条項を無効とすることにしました。
自由発明に関しては、使用者側はその成立に対して実質的に貢献しておらず、それにも関わらずに、従業者が優れた自由発明をしたときに、使用者の立場を利用して、特許出願をする権限などを取り上げるのは不当であると考えられるからです。
A自由発明の内容
(a)使用者等の業務範囲を解釈するときには、法人であるときには、定款の記載に注意する必要があります。定款には「…その他、これに付随する事業」と記載されていることが通常だからです。
例えば薬品会社の社員が包装・容器の技術分野のうち特定の薬品の保管・輸送に適した容器の発明をした場合には、自由発明とはいえず、職務発明であると解釈するべき場合が多いと考えられます。薬品会社が当該発明について特許を受ける権利を承継し、特許出願して、権利化した特許を子会社などに実施させれば、本業である薬品の売上増大に寄与する可能性があるからです。
これに対して、薬品と関係のない物品(例えば書籍など)の包装技術の発明のごときは会社の業務に関係ないため、自由発明であると解釈されます。
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留意点 |
本稿では、従業者発明のうち職務発明以外のものを自由発明(広義の自由発明)としていますが、書籍(吉藤幸朔著「特許法概説」など)によっては、さらにこれを二つに分けて、(イ)の条件を満たさないもの(狭義の自由発明)と、(イ)の条件を満たすが(ロ)の条件を満たさないもの業務発明とに分けることがあります
→業務発明とは
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