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①Specific Utilityの意義
(a)米国特許制度においては、”
Anything under the sun that is made by
man”(太陽の下で人によって創造したあらゆるもの)が特許の対象として、例えば人工微生物(石油を分解するバクテリア)の発明なども積極的に保護する姿勢をとってきました(チャクラバティ判決/Diamond
v. Chakrabarty, 447 U.S. 303.
1980.June)。これにより、バイオテクノロジーに関連する技術の特許としての保護が拡大されたと言われています。(b)しかしながら、新たに解明された人間の遺伝子のシーケンスであって、研究開発用の一種のタグとしての役割を有するものというような発明を特許出願され、独占排他権を取得されると、そのシーケンスを使った他人の研究が制限され、自由な研究開発が阻害される可能性があります。
(c)このため、判例では、有用性の一態様として特定的な有用性が要されています(In re Fisher、421 F.3d 1365)。
(d)特定的・実質的な有用性が特許出願人により主張されたときには、当該発明の有用性が推定されます(MEPE2017)。
②Specific Utilityの内容
(a)In
re Fisherの事件では、人間の遺伝子のシーケンスの発明であり、それらの遺伝子が表すたんぱく質の機能を見極める(identify)ことなく、ただ将来の遺伝子研究に役立つツール(一種のタグ)として役立つに過ぎませんでした。
判例では、たんぱく質の機能が不明であるから、当該発明は特定的に有用ではなく、単に研究に使用されるに過ぎず、リアルな社会で利用されるものではないから、当該発明は実質的に有用ではないとして、特許出願を拒絶した特許商標庁の決定を支持しました。
→Specific Utilityのケーススタディ
こうした判例の経緯から、米国特許商標庁の特許出願用マニュアル(MEPE)では、発明が特定的に有用であることと発明が実質的に有用であることを合わせて、specific
and substantial utilityということがあります。
(b)例えば“複合的な発明をゴミ埋め立て地に用いること”(“the use of a complex invention for
landfill)は特定的かつ実質的な有用性を欠くとされています。
(c)さらに特定的有用性の“特定的”の意味合いについて次の判決を引用します。
・‘化合物が“生物学的に活性を有する”とか“生物学的に特長を有する”という程度では(特定的有用性を認めるのには)不十分である。’/‘indication
that compound is “biologically active” or has “biological
properties” insufficient standing alone’(In re Kirk, 376 F.2d 936,
153).
・‘明細書に中間生成物が存在し、これが作用し、或いは反応して、用途不明の製品を製造することに使用できるというだけでは(有用性を認めるには)不十分である。’/It
is not enough that the specification disclose that the intermediate
exists and that it "works," reacts, or can be used to produce some
intended product of no known use.’ (In re Joly 376 F.2d 906)
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