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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1335   

Substantial Utility/特許出願/Utility

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

Substantial Utilityとは(特許出願の要件としての)

意義  Substantial Utility(実質的な有用性)とは、リアルな社会において利用できることをいい、米国特許法第101条の有用性の一態様です。



内容 @Substantial Utilityの意義

(a)米国では、特許制度を正当化する理論の一つとして、契約理論があります。この理論は、創作のインセンティブとして報酬を与えることにより、人々は競って新たな発明をするようになるという前提に立脚しています。

 そこで新規に有用な発明をした者に、当該発明を特許出願することにより、当該発明を権限ある当局に開示させ、当局が当該発明を開示する代わりに、一定期間に限って独占排他権である特許権を付与し、技術の進歩と産業の発展を図るというものです。

(b)この理論からすると、特許出願人に特許を付与する対象である発明は、社会に有用でなければならず、この有用性とは、単に名目的、形式的なものでは足りずに、実質的にリアルな社会に対して有用なものでなければなりません。

(c)例えば研究の過程において一種の道具(ツール)として使用される情報(例えば人の遺伝子情報)にかかるアイディアを特許出願したような場合、実質的有用性が欠けるとして拒絶される可能性があります。そのアイディアを利用して第三者による新規で有用な発明が創作される可能性があるとしても、そうした創作活動は主として個人の思索として行われるものであり、リアルな社会の活動とは一線を画するべきものだからです。

 もちろん、そのツールが新規な実験器具・実験装置であって、それを生産するために工場が建てられたり、新たな雇用を創出する場合には、この限りではありません。

(d)以上の趣旨から、米国の判例は、米国特許法第101条の有用性の一態様として、実質的有用性を要求しています。

(e)特定的・実質的な有用性が特許出願人により主張されたときには、当該発明の有用性が推定されます(MEPE2017)。

ASubstantial Utilityの内容

(a)Substantial Utilityに関して米国特許商標庁の特許出願マニュアル(MEPE)は、In re Fisher 事件を引用しています。

(イ)この事件は、新規に解明された人間の遺伝子のシーケンスに関して特許出願がなされたケースです。もっともそれら遺伝子により表されるたんぱく質が研究の対象になっているわけても、当該たんぱく質に関して特別の機能が判明しているわけでもなく、ただ単に今後の遺伝子の研究に便利なタグとしての機能を有するというものです。

(ロ)米国特許商標庁は、特許出願人の発明の有効性を否定する決定を行い、そして控訴裁判所は、この決定を支持しました。前記発明はたんぱく質の機能をidentifyしていないから特定的に有用ではないし、もっぱらリアルな社会で利用されないから実質的にも有用ではないと解釈したからです。

(ハ)この解釈の中で判決文は次のように述べています。

・“特許出願人は、発明が公衆に対して、開示された時点での有り様のままで有用であることを示さなければならない。さらなる研究の成果として有用であるというだけでは足りない。”/“[A]n application must show that an invention is useful to the public as disclosed in its current form, not that it may prove useful at some future date after further research.”

zu

・“簡単に言えば、実質的な有用性の要件を満たすためには、(特許出願人により)申し立てられた用法が、クレームに記載された発明が重要(significant)で現時点で手に入れることができる利益を公衆にもたらすことを示す必要がある。”/“Simply put, to satisfy the ‘substantial’ utility requirement, an asserted use must show that the claimed invention has a significant and presently available benefit to the public.” Fisher, 421 F.3d at 1371,



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