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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1361   

Admissibility(証拠能力)/特許出願/

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

Admissibility(証拠能力)のケーススタディ

意味  Admissibility(証拠能力)とは、ある証拠が裁判所によって受け入れられる性質をいいます。



内容 @Admissibility(証拠能力)の意義

(a)特許出願人又は特許権者の権利は、無体の財産に関するものであるため、その存在や範囲などを巡って他人との間に争いが生じ易いことを承知しておく必要があります。

(b)そうした裁判所での当事者の主張の立証の基礎となるのは、証拠です。ひとくくりに証拠と言っても、当事者の主張を強力にサポートするものから補強的な証拠まで、その証明力の程度は様々ですが、それとは別に、裁判所が当該証拠を受け入れること、すなわち、admissibility(証拠能力)が存在するかという問題もあります。

(c)ここでは、当事者が証言の証拠能力に疑義を呈した事例を紹介します。

AAdmissibility(証拠能力)の事例の内容

[事件の表示]ETHICON INC v.UNITED STATES SURGICAL CORPORATION No.97-1269

[事件の種類]特許侵害事件

[発明の名称]外科的器具

[事件の経緯]

(a)医者であるYoonは、1970年代に、医療器具であるトルカール(trocar)の改良に着手しており、その研究開発の途中で1980年に電気技術者であるChoiと出会った。

(b)Choiは、Yoonに協力して、トルカールの改良のうちの電気技術の面に関して研究開発を行った。この仕事に対してChoiは報酬を受け取っていない。

(b)Yoon に対するChoiの協力は18カ月に亘り、1982年に終結した。この時点では、Choiは、商業的な製品の開発に至っていないと信じていた。

(c)ところが、Yoonは、との協力関係が終了したのと同じ年(1982年)にトリカールの改良である外科的機器の発明について特許出願をした。

 Yoonは、Choiに対して前記特許出願が行われたことを通知しておらず、また自らを唯一の発明者としていた。

 1985年にYoonの特許出願に対して特許権が付与された。

(d)YoonはETHICON INCに独占的実施権(exclusive license)を許諾した。

(e)ETHICON INC(原告)は、1989年に、UNITED STATES SURGICAL CORPORATION(被告)を特許権侵害で提訴した。

(f)被告は、訴訟の継続中である1992年に、Choiの存在を知り、ChoiがYoonの特許発明の共同発明者であるとして、Choiから遡及的サイランス(retroactive license)を受けた。

(g)このライセンスの条項により、Choiには被告から300,000ドルが即座に支払われ、また被告の訴訟の結果に応じた成功報酬(contigent)として、10年に亘って100,000ドルが支払われることになっている。その見返りとして、Choiは被告に独占的ライセンスを許諾し、かつ訴訟で証言することに同意した。

 またChoiは、本訴訟にdefendant-intervenor(被告側参加人)として参加した。
→intervention(参加)とは

(h)本訴訟の争点は、ChoiがYoonの発明の共同発明者であるかどうかである。

 Yoonは、単独で発明を行ったと主張しており、特許出願の願書にも単独で発明した胸が記載されている。

(i)地方裁判所が共同発明者であったことを認め、原告の訴えを退けた。

(j)原告は控訴した。

 原告の主張の一つは、Admissibilityの欠如、即ち、報酬の見返りに行われたChoiの証言は、裁判所が受け入れるべきではないというものである。

zu

[控訴裁判所の判断]

 証人がケースの行方に応じて金銭的な利益(pecuniary interest)を有することは、証明力(probative weight of testimony)の問題に過ぎず、証拠能力の問題ではない。この点に関して例えば次の判例を見よ。

“証人が原告の従業員であることは、証拠の重み(証明力)に影響するに過ぎず、証拠能力には影響しない。”

Den Norske Bank AS v. First Nat'l Bank of Boston, 75 F.3d 49, 58

 従って地方裁判所は、Choiがそのバイアスを生じかねない反対尋問を受けた際に、Choiの証言を採用したことに関して、裁量権を濫用していない。

[コメント]

 証人が報酬を受けていることを、訴訟の相手方が攻撃することはしばしば見られますが、証人も時間をかけて証言をしている以上、一概に、その内容が否定されるべきではありません。従って、証言の証拠能力まで否定することは行き過ぎであります。

 本件では、通常の侵害訴訟の進行中に、被告側が、特許出願の手続から締め出された共同発明者を見つけ出し、報酬を支払って証言をさせたという点において、特異性がありますが、しかしながら、それはあくまで証拠の信頼性の問題として評価されるべきです。



留意点

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