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①Unilateral Right to Sueの意義
(a)“Unilateral Right”の“Unilateral”とは、“一方的な”あるいは “相互的”でないという意味です。
(b)共同発明に関して複数の人間を発明者として特許出願して特許権が設定された場合、特許出願中或いは特許権の設定登録後に発明者の利益の一部(持分)が他人に譲渡された場合には、当該特許権に関して複数の所有者、すなわち共有者(Co-owner)が存在する状態となります。
(c)米国の判決は、共有に係る特許権に関して次のように述べています。
侵害に対する訴訟(Action for
infringement)には、全ての共有者が原告として加わらなければならない。
ETHICON INC v.
UNITED STATES SURGICAL CORPORATION No.97-1269.
さらに同判決の中で引用している判例として、Moore v. Marsh, 74 U.S. 515, 520があります。
(d)しかしながら、甲乙が共有する特許権において、甲が丙を特許権の侵害で訴えようとしても、乙が訴訟に加わることを許否すれば、甲は、丙の行為により生じた侵害を回復する救済を受けられないことになります。
こうした状況を回避するための手段として、特許出願に対して特許が発生した時点で、共有者の間で、相互に侵害者を訴える一方的権利を許諾することが行われています。
②Unilateral Right to Sueの内容
(a)他の共有者乙に対して一方的権利を許諾した一の共有者甲が第三者丙に対して特許発明を実施するライセンスを許諾することが可能か否かが争われた事件があります。
Schering Corp. v. Roussel-UCLAF SA, 104 F.3d 341
この事件の判決によれば、甲は、一方的権利を許諾したからと言って直ちに第三者丙に対してライセンスを許諾することができなくなる訳ではないが、仮に他の共有者乙が丙に訴えた場合には、一方的権利により、丙に対する訴訟に加わる義務を負うとしています。
(b)こうした状況を避けるためには、丙は、共有に係る特許権についてライセンスを受けようとするときには、共有者間に一方的権利が存在するか否かを確認し、少なくともかかる権利が存在するときには、共有者双方からライセンス契約を受ける必要があります。
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