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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1389   

Presumption of Patent ValidityのCS2/特許出願

 
体系 実体法
用語

Presumption of Patent Validityのケーススタディ2

意味  Presumption of Patent Validityとは、アメリカ特許法において特許は有効なものであると推定されることをいいます。


内容 @Presumption of Patent Validityの意義

 特許出願は当該技術分野に詳しい審査官の審査を受けるため、米国特許法では特許が有効であるものと推定する旨の規定が置かれています。

 この推定は、特許訴訟の原告に有利であり、ゆえに被告はあの手この手で特許の有効性の推定を覆し、或いは弱めようとしてきます。

 特許出願の審査は、本来世界中で公開された技術を基礎として行われるべきですが、実際に米国特許商標庁に審査資料としてデータべース化されている技術情報はその一部にすぎません。従って審査官が審査するべき公知技術を見逃す可能性が存在します。さらにまた特許出願の補正の是非など、様々な局面で審査官がエラーをおかす可能性があります。

 しかしながら、判例はこうしたエラーが生ずる可能性を一般的に述べただけでは、特許の有効性の推定を覆し、或いは弱めることはできない旨を判示しています。

 これに対して特許出願の手続き上で具体的なエラーがあった旨の証言は、裁判の行方を左右する可能性があります。こうしたことが議論された事例を紹介します。

APresumption of Patent Validityの事例の内容

[事件の表示]NEUTRINO DEVELOPMENT CORPORATION v. SONOSITE, INC.,

[事件の種類]特許侵害事件(証人排除の動議に対する略式判決・一部認容一部棄却)

[事件の経緯]

(a)Richard T. Redano は、1997年9月9日に、医療発明(人体の一部についての血行動態の刺激・監視及び薬物伝達の加速の方法及び装置に関する発明)に関して米国に特許出願(08/926209)を行うことで米国特許第5947901号を取得するとともに、その一部継続出願として米国特許出願(09/315867)を行い、特許権(U.S.Pat No. 6221021)を取得しました。

(b)Neutrino Development Corporation(原告)は、前記特許(本件特許)をRedanoから譲り受け、そしてSONOSITE, INC.,(被告)を特許侵害で訴えました。

(c)被告は、抗弁の立証のために7人の証人を立てました。

(d)原告は、全ての証人に対して証人排除の動議、特許侵害の略式判決を求める動議を提出しました。

(e)裁判所は、証人排除の動議を検討し、その一部を認容し、そして本件特許の文言侵害を認める略式判決を出しました。

(f)この記事では、証人の一人であるDonald W. Bakerに関する部分を紹介します。


[当事者の主張]

(a)原告は、{特許出願の補正の是非に関して}審査官のエラーが存在した旨の証人(Dr. Quistgaard)の陳述に関して、特許の有効性の推定の問題に関する反論としては適切でないと反論した。

(b)被告は、証人の意見は、米国特許商標庁の審査の問題(エラー)に関する一般的な証言ではなく、本件特許の有効性を弱める本件特許出願における固有の欠陥を指摘するものであると主張した。


zu

[裁判所の判断]

(a)既に論じた通り、特許の有効性の推定は当事者によって反論可能(rebuttable)であり、従って特許出願の手続に関する全ての証拠が排除されることはない。

ただ単に審査官がエラーをする可能性があることを指摘したに過ぎない一般的な証言の証拠としての価値を制限する旨の判例があるに過ぎない。例えば次の事例を参照せよ。

Bausch & Lomb, Inc. v. Alcon Labs., Inc., 79 F.Supp.2d 252, 255

この判例は、この種の証言によって示された{特許出願の手続き上の}不具合により特許の有効性に関する立証義務が{それを否定する当事者側から}それを肯定する当事者側へシフトすることはないと判示している。

(b)本件の証人のように特許出願の手続上の特定の不具合(defect)を証言する証拠があったとしても、それにより特許の有効性の立証責任が被告から原告へシフトされることはない。

(c)しかしながら、だからといってその証言が本裁判の審理に無関係であるということにはならない。前述のように、特許出願の手続上の不具合は不法な行為(inequitable conduct)の抗弁の論点と関連がある。

(d)証人は、本件特許出願の補正に新規事項が含まれていたか否かに関して、彼の調査では審査官による2つのエラーが存在していた旨の意見を述べた。

さらに証人は、次のことを証言している。

・{新規事項の問題の対象でとなった}手持ち式の超音波診断用発生器(hand-held nature of the ultrasonography generator)について特許出願人が審査官に対して正確ではない陳述をしたこと

・審査官はこの陳述により当該特許出願の明細書に引用されていた先行技術に前述の“手持ち式の超音波診断用発生器”の補正に対する裏付けを見出したこと

 この証言は、本件特許に対して申し立てられた審査官の間違った解釈に関連しており、従って本件裁判において受け入れることができる。



留意点

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