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1458
ライセンシー・エストッペル(禁反言)/特許出願/特許の活用 |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
ライセンシー・エストッペル(禁反言) |
意味 |
ライセンシー・エストッペル(禁反言)とは、知的財産権のライセンス契約のライセンシーは、当該知的財産権の有効性にチャレンジ(異議を唱える)ことを禁止されるという原則です。
但し、特許に関しては、現在では、この原則は適用されません。
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内容 |
@ライセンシー・エストッペルの意義
(a)新規な発明をした者が特許出願し、実体審査をパスすると特許権が付与されます。この権利は財産権であり、特許の活用の手段として、自ら特許発明を実施するだけでなく、他人に対して発明の実施を許諾するライセンス契約をすることもできます。
商標権・意匠権などに関しても同様です。
(b)ライセンサーが、特許の有効性に異議を唱えることに対するエストッペルの原則は、少なくとも1855年には適用されていました。
In Kinsman v.
Parkhurs事件においては、当事者は、被告が原告の特許の範囲で装置を製造することが許可され、その見返りとして、装置の売上の一部を原告の利益を配分するという合意が成立しました。
原告が、その利益の配分を求めて訴訟を提起したときに、被告は、原告の特許は無効であり、原告に対して何も債務を負っていないと主張しました。
最高裁判所は、原告名義の特許権の下で装置を製造していた被告は、特許の有効性に対して異議を唱えることで、その名義を否定することを禁止される(estopped
from..)と判断しました。
(c)この原則の基本になる考え方は、ライセンシーは、ライセンスの合意による恩恵を受けながら、同時に、その合意の基礎である知的財産権の有効性を攻撃するべきではないということです。
(d)しかしながら、米国の特許法においては、ライセンシー・エストッペルの原則は覆されました。
1969年、米国の最高裁判所は、Lear, Inc. v.
Adkins事件において、ライセンシー・エストッペルは連邦政府のポリシーに反すると決定しました。
このポリシーとは、疑義のある特許の無効性を隠蔽するべきではないということです。
発明者が特許出願をした時(この判例が出た時点では発明をした時)に既に社会の共有物となっているテクノロジーに関して、自由で完全な競争を可能とするためです。
言い換えると、特許する価値のないテクノロジーを公衆の自由財産として取り戻すために、特許を無効とすることへの公衆の利益が強いことに鑑みて、ライセンシーが特許の有効性にチャレンジすることが許されたのです。
→ライセンシー・エストッペル(禁反言)のケーススタディ
Aライセンシー・エストッペルの内容
(a)判例により、特許ライセンス契約に対してライセンシー・エストッペルが適用されなくなったとはいえ、契約の当事者の間でそれに代わる合意をすることは可能です。
ライセンシーがライセンサーに対して特許の有効性を争わないことを求めて、不争義務が契約書に盛り込まれることはよくあります。
→"Non-contest" clause(不争義務条項)とは
もっとも、この義務に反してライセンシーが反しても、契約違反となるだけであり、裁判所が特許の有効性に関して審理できなくなるものではありません。
(b)米国の商標法においては、ライセンシー・エストッペルは、未だ有効です。
商標に対するパブリック・ポリシーが特許に対するそれと異なるからです。
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