体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Markman判決 |
意味 |
Markman判決は、米国の裁判において、特許クレームの解釈が最終的に法律問題であることを示した判例です。
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内容 |
@Markman判決の意義
(a)特許制度の固有の問題として、クレーム(特許出願人本人により作成・提出される保護を求める範囲を記載した書面)の解釈は、事実問題であるか法律問題であるかという点があります。
こうした問題が提示される事情として、例えば契約書などの文書(written
document)の解釈(construction)は、通常は、法律問題として扱われるという事情を挙げることができます。なぜなら、英米法では、口頭証拠排除の原則が適用されるため、当該文書が証拠として採用されたのであれば、文書の解釈において、その文書以外の証拠により事実を確認する余地がないからです。
→parol evidence rule(口頭証拠排除の原則)とは
(b)法律家によれば、“特許(特許明細書・請求の範囲)は契約よりは法令に類似する文書である”と考えらえています(例えば後述のTeva判決のトルーマン判事ら)。
法令の解釈は法律問題であり、また契約も法律問題として取り扱うのが通常であれば、特許クレームの解釈も法律問題として扱うのが合理的です。
(c)Markman判決は、“クレーム解釈は、法律問題(question of
law)として裁判官が判断することが妥当であり、事実問題(question of
fact)として陪審により判断されるべきではない。”と判示した判決です。
但し、ここでいう判断とは、クレームの範囲又は用語に対する最終的な判断という意味と理解するべきです。
何故なら、2015年のTeva判決において、控訴裁判所は、地方裁判所がクレーム中の用語に関して認定した事実を、明確な誤りがない限り、覆してはならない旨が判示されているからです(→Teva判決とは)。
例えば特許出願人がクレーム中に使用した用語が不明確であるような場合に、陪審裁判で専門家証人の意見を聴取することは、クレームの記載事項を判断する上で有用です。
クレームの用語の意義を最終的に決定することは裁判所の専権事項(法律問題)であるとしても、地方裁判所の認定した事実を覆すかどうかの判断は、規則で定めた判断基準に照らして判断するべきだからです。
(d)Markman判決を受けて裁判所で行われるクレームの解釈をマークマンクレーム解釈ということがあります。
→マークマン・クレーム解釈(Markmen claim construction)とは
(e)以下、Markman判決の概要を説明します。
AMarkman判決の内容
[事件の表示]Markman v. Westview Instruments, Inc., 517 U.S. 370
[事件の種類]特許侵害訴訟
[事件の経緯]
・Markmanは、“An inventory control
and report system”と称する発明を特許出願し、特許権を取得した。
・ここで“inventory”の一般的な意味は“在庫”
(財産の目録を含む)であり、明細書には、クリーニング業の取引に関して使用されるシステムが開示されている。
・Markmanは、Westview Instrument, Inc.が自分の特許発明を侵害していると訴えた。
・陪審は、Markman側の証人の証言を聴いて、クレーム中の“inventory”という用語を、“cash
inventory”と解釈して特許権が侵害されている旨の評決を出した。
・ところが地方裁判所は、“inventory”という用語を、“cash inventory”及び“the actual physical
inventory of articles of
clothing”(洗濯の製品に関する物理的な実際の在庫)の双方と解釈した上で、評決と反対に、特許権非侵害の判決を下した。
・連邦控訴巡回裁判所(CAFC)は、クレームの解釈(interpretation)は裁判所の専権事項であるとして、判決を肯定した。
[最高裁判所の判断]
最高裁判所は、
・クレームの解釈は、証拠に基づくとしても(notwithstanding its evidentiary
underpinnings)、裁判所が行なうのが相当である
・クレーム解釈は、純粋な法律問題である
と結論して、連邦巡回区控訴裁判決を支持しました。
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