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①参入障壁の意義
(a)“参入障壁”という用語は、マスコミではあまり良くないイメージで使用されることが多いですが、既存業者にとって、新規参入の事業者との競争回避のために、自分の市場への参入のハードルが高くなるように行動するのは、重要な戦略です。
(b)例えば、事業の規模が大きいことは、それ自体、他の事業者から見て参入障壁となることが多いです(いわゆる“スケールメリット”)。
大量生産により、製品を廉価に製造することができるからです。
仮に他の事業者が同様にスケールメリットで対抗しようとすれば、工場設備などに対する“初期投資の額”が大きくなります。
敢えて巨額の初期投資に踏み切ったとしても、流通業者などの“流通経路の確保”できるのかなどの問題もあります。総じて市場参入に伴うリスクが大きくなり、他の事業者が二の足を踏むという結果となります。
(c)“参入障壁”を構築するときには、自分の会社に向いた態様の障壁を選択する必要があります。
例えば中小企業が前述の“スケールメリット”による参入障壁を構築することは容易ではありません。
①参入障壁の内容
(a)参入障壁の種類・態様に関しては、例えば“ポーターの7つの参入障壁”という書籍に詳しいので、参考として下さい。
(b)ここでは、知的財産権との関係性という観点から、参入障壁を説明します。
(c)前記スケールメリットに対抗可能な参入障壁として、特許権があります。
すなわち、市場での顧客のニーズや解決するべき課題を見出し、これを解決する技術的なアイディア(発明)を創作して、特許出願し、権利化することにより、当該発明の業としての実施を一定期間独占することができます。これは、法律の力を利用して、その発明の技術的な範囲に限って、局部的な参入障壁を作ったことになります。
さらに当該発明の改良発明、或いは、関連発明を行い、それぞれ特許出願して権利化することにより、参入障壁の範囲を広げることができます。
但し、これらの参入障壁は、一時的なものであり、期間的な制限(特許出願の日から20年間を超えない期間)があります。
この期間(特許権の存続期間)を終了した後には、その発明を公衆の自由な実施に委ね、以って発明の保護及び利用を図ることで産業の発達を図ることが、特許制度の目的だからです。
→特許権の存続期間とは
従って、企業が有する革新的な技術(コア技術)に関しては、特許出願を避けてノウハウとして持っておくという選択肢もあります。
→コア技術とは
そして、コア技術の内容が判らない範囲で、コア技術に関連する周辺技術などを特許出願して権利化し、コア技術を囲むように特許群による参入障壁を築くという戦略(オープンクローズ戦略)も考えられます。
→オープンクローズ戦略とは
(d)法律の力による参入障壁として、政府の規制があります。典型的なのは、ある業種において、特定の業者に事業の実施が許可されている(専売制や免許制)場合です。
専売制などとは別にして、ある産業の分野で政府による規制が敷かれたり、或いは撤廃されたときに、これに関連して技術的なニーズが生じ、これを解決する発明を特許出願して権利化することが可能となる場合があります。例えば道交法の規制により、車両の大きさに制限されることによるニーズです。従って、制度(法律)の変わり目では、そうしたビジネスチャンスが生じている場合があるので、注意する必要があります。
(e)広告などにより自社商品(又はサービス)を他社商品(又はサービス)から差別化し、消費者からブランドとして認知された時には、そのブランド力(信用など)が参入障壁として機能します。
商標に培われた信用は、商標権により保護を受けることができます。
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