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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1486   

Four scorners rule CS1/特許出願

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

Four corners ruleのケーススタディ1

意味  Four corners rule(フォー・コーナーズ・ルール)とは、契約法において、或る書面の意味は、当該書面の4つの隅(コーナー)の内側に記載された事項から採用しなければならないという原則を言います。



内容 @Four corners ruleの意義

(a)フォー・コーナーズ・ルールは、契約書などの書面の解釈の原則であり、当該書面での合意が曖昧でない(unambiguous)のであれば、その書面の4つの隅の外から(すなわち書面の外から)、当該合意の内容を補足・修正する証拠を持ち込んで解釈してはならないというものです。

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(b)ここで“曖昧”とは、多義的に解釈できるというような場合です。

例えば知的財産に関する合意では、契約書中に“甲(当事者)が所有する特許”という文言が使われていた場合に、後日、“特許”が特許出願を含むかどうかで当事者間で争いを生ずる可能性があります。

 例えば甲の事業の譲渡に関連して、甲の特許の一切を併せて譲り受けたいというケースでは、譲受人(乙)としては、甲の“特許出願”を残しておいては困るということが考えられます。

 そうした場合には、“この契約書にいう特許には、特許出願を含む。”というような文言を契約書に入れておく必要があります。

(c)フォー・コーナーズ・ルールが必要となる理由は、契約時点の前後において、当事者が契約に至った動機に関係する様々な覚書や約束事(口約束を含む)が存在している場合が少なくないからです。

 裁判所としては、そうした証拠(外部証拠)に基づく当事者の主張を全て受け入れていたのでは、収拾がつかなくなるからです。

 そうした事例を紹介します。


AFour corners ruleの事例の内容

[事件の表示]
SMS DEMAG AKTIENGESELLSCHAFT,v.MATERIAL SCIENCES CORPORATION,
565 F.3d 365

[事件の種類]契約違反に基づく給付(特許権譲り戻し等)請求事件

[判決日]2009年5月8日

[事件の要旨]

この事件は、小規模の技術開発・設計会社であるTDCが保有する粉状塗料を用いたコーティング方法の技術(“パウダークラウド”)を、大手液体コーテング会社であるMSCに売り込むに際して、TDCとMSCとの間で次のような合意をしたことに端を生じます。

・TDCは、前記技術に関して所有する複数の特許及び特許出願をMSCに有償で譲渡する。

・MSCは、TDCから前記技術に関する備品を購入する。

・本合意は、2002年に終了するが、MSCの裁量(discretion)により更新することができ、互いの売り上げ目標が合致する限り、自動的に更新される。

・仮に本合意が終了し或いは満了したときには、MSCは直ちに設備の製造及び販売を停止し、返還可能な全ての技術をTDCに返還する。

(b)前述のパウダークラウドは、技術的には優れていたものの、乙の売り上げは期待されたほどに伸びませんでした。

 このため、甲は、備品の生産設備を維持するために、コスト超過に陥り、乙から借金をしながら、備品の生産を続けていました。

(c)パウダークラウドの売り上げの不振は乙にとっても負担であったため、乙は、パウダークラウドの事業を、自らが保有する既存の液体コーティング部門に組み込むことを決定しました。

 甲は、乙への備品の供給が期待できなくなったために、乙に対して、口頭の約束に基づいて、乙への借金を帳消しにすることを求めました。

 乙は、この書面に応答しませんでした。

(d)その後、乙は、甲に対して、甲の負債の額が所定額に達していること、甲へ支払うべき技術譲渡料を前記負債の一部と総裁する旨を通知しました。

(e)甲は、乙に対して、以後、甲の事業への協力はできない旨を伝えるとともに、備品の供給停止により被った損害の賠償、及び、乙へ譲渡した特許及び特許出願の譲り戻しを求めて訴訟を提起しました。

(f)地方裁判所は、損害賠償並びに特許及び特許出願の譲り戻しのいずれの請求をも退ける略式判決を行いました。

 甲は、この略式判決に対して控訴しました。

[当事者の主張]

(a)MSCは、本合意は、[この事件の状況の下で]特許及び特許出願を譲り戻しすることを要求してはいないと主張しました。

何故なら、本合意のセクション10.6(b)では、“本合意がMSCによって終了された場合には”特許等を譲り戻す旨が規定されているというのです。

(b)少なくとも、この条項は、本合意に違反(breach)した当事者がMSCである場合に限りMSCは特許及び特許出願を譲り戻すとは述べていません。

しかしながら、MSCは、

・こうした特別の条項が本合意に挿入されたこと、及び

・“技術”の譲り戻しに関する一般的な条項

 が、契約違反をした当事者がMSCがある場合に限って、TDCの利益を保護することが、契約時の両当事者の意図であったと主張しました。

[裁判所の判断]

(a)控訴裁判所は、甲の損害賠償の請求を退けたことに関して、原判決を肯定しましたが、特許及び特許出願の譲り戻しに関しては原判決を取り消しました。

(b)控訴裁判所は、本合意のセクション10.2及びセクション及びセクション1.12を合せて読むと、これらの条項は、SCに対して、本合意によって譲られた特許を、本合意が停止された時点で譲り戻すことを要求している、と判示しました。

・“仮に本合意が終了し或いは満了したときには、MSCは直ちに設備の製造及び販売を停止し、返還可能な全ての技術をTDCに返還するべきである。”(セクション10.2)

と記載されており、

・“前述の技術とは、特許を含むが、これに限らず、…特許出願をも含む”(セクション1.12)。

(c)控訴裁判所は、“契約違反をした当事者がMSCがある場合に限って、TDCの利益を保護することが、契約時の両当事者の意図であった”旨のMSCの主張に対して、仮にこれが両当事者の意図であったとしても、それは両当事者が[書面で]述べたこととは異なる、と判示しました。

(d)控訴裁判所は、その結論を導くために、いわゆるフォー・コーナーズ・ルールをあてはめました。

・イリノイ州のフォー・コーナーズ・ルールの下では、仮に文書が不明瞭(unambiguous)でなければ当事者の義務の範囲は、外的証拠を参照することなく、契約の文言の範囲内で決定しなければならない。

・本合意は、その条項として、本合意が終了したときに、MSCがTDCの特許を譲り戻すことを要求している。

・これらの条項は、不明瞭ではないから、我々は、本合意を、その文言通りに(as written)、執行させなければならない。



留意点

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