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1507 Implied license/特許出願/禁反言 |
体系 |
ビジネス用語 |
用語 |
Implied license(黙示ライセンス) |
意味 |
Implied
license(黙示ライセンス)とは、英米法において、特許権者が明示的にライセンスの許諾の意思を表示していなくとも、特定の事情から、許諾の意思があったと推定されることにより認められるライセンスを言います。
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内容 |
①Implied licenseの意義
(a)特許出願人が発明を開示した代償として付与される特許権は、発明の製造・使用などをすることについての排他的特権を内容とする財産権であり、
他人に対して当該特許のライセンスを許諾することで、特許発明を利用することができます。
(b)ここで特許権者がライセンスを許諾する旨の意思が文書などによって明示されている場合、そのライセンスを明示的ライランスと言います。
→Express license(明示ライセンス)とは
(c)これに対して、特許権者と相手方との間で特許侵害訴訟などの紛争が生じていても、特許出願を行った時点の前後、或いは特許権成立後の具体的な事情により、特許権者或いは特許出願人にライセンスを許諾する黙示の意思があったと推定するべき場合があります。
(d)ここで“Implied”とは、ある事情に関する意思が、周囲の事情、用いられた言語、表現もしくは行動などから推認され得ることを言います。
(e)このような場合に黙示ライセンスが認定されます。
換言すると、黙示ライセンスという概念は、或る一つの理論に基づいて成否を論ぜられるべきではなく、個々の事情に応じて、その事情に関して発達した別個の理論(後述のShop-right理論、After-acquired
patent理論など)から見て権利の主張を認めるべきでない場合に、“黙示のライセンスが成立しているから特許権の侵害は成立しない”という論法を用いるために、便宜的に用いれらる概念であると理解することができます。
②Implied licenseの意義
以下、黙示ライセンスが成立したケースを紹介します。
(a)Shop-right(雇用者の権利)のケース
例えば或る事業者(企業など)に雇用された研究者が当該事業者の事業の範囲で職務として発明して、自らの名義で特許出願をした場合に、雇用者である事業者には、法律の作用により(in
operation of law)、当該発明に関して黙示ライセンスが認められる旨が判示された判例があります。
Gate-Way, Inc. v. Hillgren, D.C., (82 F.Supp. 546) 1949年
→Shop-rightとは
(b)After-acquired patent(爾後取得特許)のケース
(イ)特許侵害訴訟の原告は、被告(米国合衆国の政府)との間でワイヤー切断装置の技術開発契約を締結していました。
(ロ)被告は当該契約に基づいて、“次の事柄との関係で想定され或いは実際に実施された発明・改良・発見(特許になったか否かを問わない)”に関してライセンスを許諾されていました。
(A)この契約により要求される試験的・開発的・研究的な業務
(B)この契約の主題に関連して行われる試験的・開発的・研究的な業務であって、それに関して当該契約が締結(award)された理解されるもの。
(ハ)この契約内容から判るように、本件契約は、特許権者が有する特許(本件特許)のみを対象とするものではなく、技術開発から派生した発明(特許出願の対象となったかどうかは問わない)を対象とするものです。
(ニ)特許権者は、技術開発契約が終了した後に、当該特許発明がアイディアの基礎として利用する基本特許の存在に気付き、その権利者から基本特許を譲り受け、被告がこの基本特許を侵害しているとして、特許侵害訴訟を提起しました。
(へ)この事件において、原告は、被告による黙示ライセンスの抗弁に対して、次のように主張しました。
前記契約をした段階で原告は基本特許の存在に気づいていないから、契約締結の過程において何ら不実の表示をしていない。故に禁反言の原則に違反していないから、黙示のライセンスが認められるべきではない。
(ト)これに対して裁判所は、次のように判断しました。
原告が主張する禁反言とは、“不実の表示による禁反言”というものであるが、これは禁反言の態様の一つに過ぎない。不実の表示が存在しなかったからといって、原告の行為が禁反言の原則に反しないとは言えない。原告は、被告との間で技術開発契約を請け負い、一定の約因(技術開発に対する報酬など)を受け取る代わりに、被告に対して技術開発の成果を実施するライセンスを与える旨の約束した。
原告が、当該技術開発の成果の実施を禁止する効力を有する基本特許を、第三者から譲り受け、その権利を被告に対して行使することは、前述の約束に反する。従って、裁判所は、原告がライセンス契約の締結後に取得した特許(After-acquired
patent)に関して、法律の効力として、黙示のライセンスが成立しているものと認める。
AMP INCORPORATED
v. THE UNITED STATES 389 F.2d 448
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