内容 |
①一般的に特許出願に係る発明の進歩性の判断に関して、進歩性の審査基準によれば、引用発明と比較した有利な効果が明細書等の記載から明確に把握されることは、進歩性の存在を肯定的に推認されるのに役立つ事実に過ぎません。
②これに対して、選択発明の進歩性が認められるためには、基本的に、先行発明に対して顕著な効果がなければなりません。何故なら特許出願に係る発明の構成自体が既に先行発明と近いからです。
③選択発明の進歩性が認められる第1の態様は、先行発明の効果とは異質な効果を発揮する場合です。例えば先行発明が殺草性組成物の用途のみを開示する先行発明に対して、殺草剤であるとともに、殺菌・殺虫・殺ダニ剤である下位概念の発明の新規性・進歩性を認めた事例があります(昭和35(行ナ)第142号)。もっとも個々の事例により、殺草剤から殺菌剤等を発明することが容易であったと論理付けることができる可能性があることはいうまでもありません。
④選択発明の進歩性が認められる第2の態様は、同質であるが際立って優れた効果を発揮し、これらが技術水準から当業者が予測できたものでないことです。この点に関して、優れた効果を発揮するものの、引用発明との差異は引用発明の作用効果から連続的に推移する程度であり、当業者の予測を超える顕著な効果ではないとされた事例があります(平成4年(行ケ)214)。
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