体系 |
権利内容 |
用語 |
過失の推定 |
意味 |
過失の推定とは、特許権又は専用実施権の侵害(「特許侵害」という)をした者は、その侵害の行為について過失があったものと推定することです(特許法第103条)。
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内容 |
@損賠賠償請求の特則として、過失の立証責任を被請求人(侵害者)に転換しています。権利者が過失を立証するのは困難なこと、特許権は特許公報により公開されていることなどが理由です。明文の規定のない旧法の下でも同様の解釈されていました。
そこで本来特許権者が負うべき立証責任を相手方へ転換せしめたのです。 →立証責任の転換とは
A従って事業者は、事業活動が他人の特許権に抵触しないかを予め特許調査すべきです。
B本条は“過失があったものと推定する”のであり、“過失があったものとみなす”ではないので、適当な反論により推定の覆る可能性があります。
(a)いわゆる文言侵害の場合には、均等侵害の場合の方が覆る余地があると考えられます。 →文言侵害とは
(b)例えば特許出願人が請求の範囲で狭い文言(例えば接着剤)を選択しており、他人が“接着剤”を回避して別の連結手段を採用したので、権利侵害とはならないと思った、意図的に狭い文言を採用したのだから、均等の範囲とはならないと考えた、という如き場合です。
C前述の通り、“推定”は適当な反論により覆りますが、どういう場合に推定が覆るのかは必ずしも明確ではありません。旧法の下では“同業者や公的機関の専門家までが権利範囲に属しないと考えていた場合”に推定がされなかった事例がありますが、明文の規定がなかったので事情が異なります。
D平成13(ワ)14954号「生海苔の異物分離除去装置」事件では、被告商品の販売に当たり弁理士及び弁護士から特許侵害ではないという意見を聞いていただけでは、過失の推定を覆すに値しないという判断が示されています。
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留意点 |
よくある勘違いは、“自ら特許出願をして取得した特許発明をそのまま実施する限り他人の特許権と抵触しないのではないのか。”ということです。特許出願の審査では、他人の発明をそっくり創作の基礎して利用することを保護対象から除外しておらず、他人の特許の利用発明となるからです。特許調査の第1段階として、特許公報の書記的事項の最後の先行技術記載欄をチェックすべきです。
参考図32
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