内容 |
①旧特許法(大正10年法)は、特許権の効力として「業として」という要件を規定しておらず、その効力が個人的・家庭的実施に及ぶ可能性がありましたが、それは社会の実情や特許法の目的からみて行き過ぎであろうとして上記の要件が課されました。
②古い学説では、「継続的意思を以てする経済活動という意味に解する」というものもありますが、これは、非反復的・非継続的な実施が個人的実施になると誤解した結果ではないかと思われます。
③確かに、事業として発明を実施する場合は、特に実施のための設備投資をするような場合には、元をとるために継続・反復して行われる場合が多いと言えます。しかしながら、一度限りの実施であっても個人的実施ではありえない場合もあります。例えばダム工事をするために建築・土木分野の発明を一度だけ実施する場合です。
④商標出願の要件である「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」の「業務」は、継続性が必要であると解釈されます。これは、商標権が保護しようとするものが業務上の信用であり、継続して商標を使用することで商標の上に化体するからです。
⑤他方、特許出願の対象である発明は、技術的思想の創作であり、それ自体に価値があるため、一度限りの実施でも特許権の効力を免れる理由がないと考えられます。
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