パテントに関する専門用語
  

 No: 309   

特許出願の種類/防衛出願(注意点)

 
体系 特許出願の種類
用語

防衛出願の注意点

意味  防衛出願には、他人の権利化を阻止するという目的から書類作成上注意するべき点があります。

内容 @まず防衛出願をする際には、特許出願人の意図を正確に意図することが必要です。例えば依頼者から“この案件は防衛的な意味合いで行うつもりです。”と言われた場合に、防衛“的”というのは、出願審査請求をする積りが全然ないのか、他人に権利を取らせないことが主目的だけれど、あわよくば自分でも権利を取得したい、と考えているのか、確認する必要があります。

Aまた他人の権利化を阻止したい事項を、上位概念・下位概念に亘って明確化させることです。化学の分野では、先行の明細書に上位概念的に記載した発明特定事項の一部を下位概念として選択した場合、その部分に顕著な効果を生ずるときには選択発明として権利化されてしまう可能性があるからです。

B従って、上位概念に記載された物の範囲、或いは数値条件の範囲の中で特別優れた効果を生ずる部分はないのかを、発明者からよく聞き出しておくことが必要です。

C実施例をどの程度記載するのかもよく検討する必要があります。

 機械的な分野では、発明特定事項の下位概念を可能な限り開示して、特許出願人が防衛しようとする発明の範囲をしっかりガードすることがよいと考えられます。

しかしながら、化学の分野では、一般に発明の構成から効果を予測しにくいため、組成物のみを開示しても効果を裏付ける実験例がない場合には、他人の権利化を阻止できないことがあります。

Dまた防衛出願の場合には、自ら権利化する必要はないので、新規性や進歩性などの特許要件を満たすかどうかを気にせずに出願書類を作成することができます。

 しかしながら、発明の実施可能要件を全く満たさないと、防衛的な目的も果たせない可能性があることに留意すべきです。例えば新規物質の発明であり、それをどうやって製造するのかが技術常識を参酌しても判らなければ、新規性・進歩性の判断における先行技術となりません。

留意点 Cに関連して、マーカッシュ形式で多数の選択の一部として、ある発明特定事項(組成物)を含めても、所定の効果を裏付ける実施例の開示のない場合には、後の特許出願に係る選択発明の特許性を否定できないとした事例があります(昭和60年(行ケ)51号)。
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