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@一般に「公の秩序」とは国家社会の一般的利益をいい、「善良な風俗」とは、社会の一般的道徳観念をいいますが、両者をあわせて公序・良俗ともいいます。
ストラスブール改正条約では、各国が不特許事由とすることができる発明として、次の発明を挙げています。
その公表または使用が公の秩序または善良な風俗に反する発明。但し、全部または一部の締約国の法令によって禁止されていることのみによっては当該使用がそのように反するものであるとはみなさない。
これにより、当該発明が本来公序良俗を害する目的とするもの(例えば犯罪に使用する目的のもの)場合だけでなく、当該発明の公表又は使用が公序・良俗に害する場合でも、該当する可能性があります。
但し、単に法令で禁止されているだけではなく、実質的に公序・良俗を害するものである必要があります。
A例えば発明に係る器具(ビンゴ)が純然たる娯楽の用に供することをも目的としたものであって、賭博行為その他の不正行為の用に供することを目的としたものでないことが明細書の記載内容上明らかであり、発明の内容に照らして、当該器具を純然たる娯楽用に供し、不正行為の用の供しないことができるにも関わらず、不正行為に供することがあり得るという理由では特許を受けることができない発明ということはできず、特許を無効することができない、とした事例があります(最高裁判所32年(オ)249号)。
Bまた触覚による識別性を向上するために、パンチ穴を設けた紙幣の考案が公序・良俗に反するものではないとした事例もあります(昭和59年(行ケ)251号)。現行の紙幣でも1万円札は3個の凹み、5千円札は2個の凹みというように触覚による額の識別を行うことは行われています。しかし紙幣に穴を開けるという行為は違法であり、そうした考案を登録することは犯罪行為を唆すことになるので公序・良俗違反として、特許庁は出願を拒絶しましたが、審決取消し訴訟において、覆されました。将来国が穴空き紙幣を採用することが全くないと言い切れないし、仮に現行法で紙幣に穴をあける違法行為が生じたとしても、それは法律違反をした者が悪いのであって、考案そのものの公序良俗とは別の問題と判断されました。
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