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343 進歩性審査基準(特許出願の要件)/推認 |
体系 |
実体法 |
用語 |
進歩性を推認できる根拠 |
意味 |
進歩性を推認できる根拠とは、技術的な観点から、引用発明から特許出願に係る発明へ至ることの困難性を認定できる根拠をいいます。
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内容 |
@一見すると、設計的事項に見える事柄でも、当業者にとって主引用例に適用することが困難な場合があります。進歩性審査基準は、最適材料の選択・数値範囲の最適化・技術の適用に伴う設計変更などは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、他に進歩性を推認することができる根拠がない限り、当業者が容易になしえたものと認めるとしており、逆にその根拠があった場合に進歩性を肯定する途を残しています。
A進歩性を推認できる根拠とは、例えば副引用例中に特許出願に係る発明への創作活動を妨げるような事情をいいます。
例えば「圧力波機械付きの内燃機関」(平成22年(行ケ)第10345号)では、寒い環境でのエンジンのスタート特性を改善するためにエンジンへ燃料を供給するための循環路に加熱装置を設ける発明の進歩性が問題となりました。副引用例中の加熱手段が引用されましたが、それは循環路中の点Aから熱を奪って点Bへ放出するというアイディアの一部であり、そのアイディアは全体として点Aを冷却することを課題とするものでした。発明の課題が正反対ですので、これは、阻害要因ともいえるものであり、進歩性を推認する根拠となります。
→発明の不実施
B進歩性を推認できる根拠は、技術的な観点から認められるものでなければなりません。進歩性を推認する根拠とならない例と次に挙げます。
(イ)発明が創作される過程
発明は、たとえば偶然ある事柄を発見して、そこから一瞬で為し得ることもあれば、さまざまな試行錯誤により為し得ることもあります。しかしながら、発明が行われる過程は、発明の価値とは無関係です。発明をするのに要した苦労を意見書でアピールしても、進歩性を肯定される材料にはなりません。
しかしながら、化学などの分野では一定の課題に見合う材料を発見するのに多数の実験を行う必要が客観的に認められる場合には、発明の効果との関係で進歩性が認められる可能性があります。→Obvious to Try
(ロ)他の国での特許の存在
パリ条約優先権を主張して特許出願をした場合に、その主張の基礎となる外国の特許出願が特許されていることは、進歩性を肯定する根拠とはなりません。各国の進歩性の要件はそれぞれ異なり、審査も独立して行われるからです(→特許独立の原則)。
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