パテントに関する専門用語
  

 No: 344   

進歩性審査基準/特許出願の要件(外国)/PHAIR

 
体系 実体法
用語

Phair Doctrine

意味 Phair Doctrineとは、米国特許出願の進歩性判断の考え方であり、“既存の装置や方法の欠陥の原因を発見して当該欠陥を対処する場合には、その対処は、欠陥の原因が理解した後で自明であるものであっても、発明として成立する。”というものです。

“Invention may exist in discovery of the cause of a defect in an existing machine or process and applying a remedy therefor even though, after the cause of a defect understood, the remedy would be obvious.”
Ex parte Phair, 1 USPQ 133,134 (Bd.App.1929)

内容 ①“失敗は発明の母”という言葉があります。これは、たとえ失敗をしても原因を解明できれば、それを改善して成功(発明)につながるということです。発明を創作することの困難性の大半は、問題点の原因の発見・解析にあり、原因さえ分かれば対処は簡単という実例は多数あります。特許出願に係る発明の審査では、審査官は原因と対処策とを明細書中で同時に見せられるため、発明の困難性を低く見てしまう傾向があります。原因を予め知っていたものと錯誤して対処策の困難性だけから進歩性を判断するというハインドサイト(後知恵)を排除するために、Phair Doctrineがあります。

②しかしながら、Phair Doctrineの適用では、欠陥の原因を発明者が発見したということを証明できるかどうかが問題となります。我国の進歩性審査基準でも引用されている溝付きカーボン製ブレーキディスク事件(596 F. 2d 1019)では、2枚のディスクを相互に圧接して摩擦力を奏するブレーキの圧接面に水逃がし用の溝を設ける発明の進歩性が問題となりました。発明者は、ディスクにカーボン材料を用いる場合に圧接面での摩擦係数が低下するという欠陥の原因が摩擦面で水が発生することにあるとして、この原因を見つけることこそに困難性があると主張しました。しかしながら、裁判所は、原因を発見したのが発明者であることの証拠がないとして、その主張を退けました。

留意点 我国でも2000年改正前の進歩性審査基準においては、Phair Doctrineに対応する次の解説がありました。現行の審査基準においてもこうした考え方を否定するものではないと理解されます。
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