内容 |
①刊行物は、頒布によって公衆(不特定多数人)の手元に届くことで社会の公共財産となります。従って公開性や情報性を有する文書等であっても、頒布が完了しない限り、文書等に掲載された発明は新規性を喪失したものとなりません。すなわち、頒布性は、特許出願の願書等が特許庁に提出される時点と、文書等の頒布とのどちらが早いかという観点で問題となることが多く、その概念を明確にすることが必要となります。
②「頒布され」とは「配布され」と同義であり、人に配布するために作成された印刷物などであっても、未だ作成者の元で配送待ちのもの、或は、トラック・鉄道などにより配送途中のものは対象外です。
ベンジアミン事件(昭和48年(行ケ)119号)において、引用された文書が優先権主張日の前日午後に予約購読者宛に郵送に付され、主張日の翌日以降に購読日以降に配達された事例に関して、裁判所は、当該文書の刊行物性を認めて進歩性を否定した審決を覆して、購読者の一人が始めて配達を受けるまでは公然性を帯びたものと言えないので、当該文書は優先権主張日の前に公然頒布された刊行物とは言えないという判断を示しました。
③「不特定人」とは、不特定多数の者ではないので、配送を受けた者が一人でも頒布性が成立します。
④また「配布」されたかどうかが問題となるので、配布された文書を誰も読んでいなくても問題ありません。
文書等が閲覧可能な状態であることを要するか否かに関しては、判例の変遷がありましたが、今日では閲覧可能であることを要すると解されています。
→昭和36(オ)1180号(テトラポット事件)、昭和38年(行ナ)35号(印刷された貼り合わせシートの製造法事件)
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