内容 |
@進歩性審査基準によれば、商業的成功又はこれに準ずる事実は、進歩性の決定を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができます。
発明の作用効果が顕著であるという裏付けとして、発明の商業的成功を示すことが有効な場合があるからです。なお、アメリカでも同様の概念があります。
→commercial successとは
A具体的な事例は、次の通りです。
(イ)例えば発明品の売れ行きが抜群で高い市場シェアを獲得している場合。
(ロ)その発明の技術分野の複数のユーザーから従来に比べて技術的に優れていると賞揚されている場合(→昭和35年(行ケ)第34号)精紡機におけるトップローラー軸受装置)。
(ハ)発明が我国産業にとって有益な経済的効果をもたらす場合。
ベンゼンのエチル化方法の発明において、精油所残分ガスを用いることで引用発明とは全く異なる発想であり、かつ残分ガスを用いることで、原材料の極めて安価な供給と廃物の有効利用という経済的効果をもたらすので、その格別の効果を奏するものと評価できるから、引用発明に基づいて容易に発明できたものとは認められない(平成元年(行ケ)180)。
B商業的成功が肯定的に評価されるのは、特許出願人の主張・立証により、商業的成功が請求項に係る発明の技術的特徴に基づくものであると認められた場合に限られます。販売方法や宣伝等、技術的観点以外の原因によるものである場合には、進歩性を肯定的に評価する材料として認められません。
C更に商業的成功は進歩性の参酌事項に過ぎず、発明の課題解決手段(発明)がありふれたものであり、商業的成功の事実が効果の容易予測性を左右するものでないときには、進歩性を認めるには至らないことがあります。
例えば、「セルフドレイン容器」についての本件特許出願に係る発明に対し、本体とその排出部とを一体成形することによって容器を安価かつ大量に製造することは、本願優先権主張日前の周知技術であり、本願発明の実施品が商業的に成功したということは作用効果の予測容易性を左右するものではないから、本願発明は引用例及び慣用技術手段に基づき当業者が容易に発明できたと判断したじ事例があります(平成8年(行ケ)193号)。
|