体系 |
実体法 |
用語 |
Dembiczak判決 |
意味 |
Dembiczak判決は、ハロウィーンのカボチャ(目・鼻・口を描いたもの)の形態をごみ袋に適用した発明の特許出願を拒絶したUSPTOの決定をTSMテストに基づいて覆した事例(1999年)です。
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内容 |
①米国特許出願の実務では、1966年に非自明性(進歩性)の基本的判断手法を提案したグラハム判決が出された後2007年にKSR判決が出されるまでの間に、自明性を証明することに厳しいハードルが課せられる時代が続きました。
②具体的には、先行技術同士を組み合わせたり、先行技術の内容を変更することに関して教示・示唆・動機付けを見つけなければならないというTSMテストが課されたのです。
③Dembiczak判決は、その時代の判決であり、当時のTSMテストの厳格さを表す教材としてよく紹介されます。
④Dembiczakの発明の内容は、いわゆるハロウィーンのカボチャの形態をプラスチック製のゴミ袋に適用したという簡単なものです。
⑤USPTOは、次の文献を引用例として挙げて特許出願について拒絶査定をしました。
(イ)折畳み可能なプラスチック製容器(袋)
(ロ)紙の袋をハロウィーンのカボチャの形態にすることを教えた子供向けの教材。
⑥しかしながら、裁判所は、これらの引用文献を結びつける教示・示唆・動機付けが証明されていないとして、USPTOの決定を覆しました。ゴミ袋を製造する技術者がどうして子供向けの教材を参考にしてゴミ袋を製作しようと考えるに至ったのか、そこのところの動機付け等が判らないというのです。
⑦USPTOとしては、子供ですら容易に製作できたから、当業者にとって容易に製作できて当然と考えていたと推定されます。
個人的には、裁判所の判断は過剰に教条的で硬直していると考えます。
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留意点 |
日本の進歩性審査基準では、進歩性の基本的な考え方を次のように説明しています。当業者の立場にたって技術常識を踏まえて判断しようとしていることが重要であり、それにより上述の不都合が回避しようとしていると理解されます。
“進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における特許出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う”。
“この引用発明(主引用例)や他の引用発明(周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。”
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