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449 進歩性審査基準(特許出願の要件)/商業的成功・不参酌 |
体系 |
実体法 |
用語 |
商業的成功のケーススタディ(不参酌事例) |
意味 |
商業的な成功が進歩性を主張する根拠とされる場合がありますが、この種の主張はなかなか裁判所には受け入れられません。主張が参酌されなかった事例を紹介します。
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内容 |
①進歩性審査基準には、商業的成功に関して次のように記載しています。
「商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができる。ただし、出願人の主張・立証により、この事実が請求項に係る発明の特徴に基づくものであり、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものでないとの心証が得られた場合に限る。」
②従って商業的な成功の事実があってもそれが技術としての優位性と結び付けて参酌されない場合もあるし、また、そのように結び付けてもなお進歩性を認めるに足りないと判断される場合もあります。そうした事例をそれぞれ挙げます。
(A)昭44(行ケ)34号「赤外線使用電気こたつ」事件及び上級審
引用例 「脚を有する枠台の下面に反射板を設け、反射板の下方に電気発熱体を装着し、その電気発熱体を覆う保護網を設けた電気こたつ」
相違点…“電気発熱体”の代わりに“1.1〜1.3ミクロンの輻射線を発する医療用の赤外線電球”を用いていること
{構成・作用に対する裁判所の評価}
加熱用赤外線電球が医療効果をも有することが周知の事実であることは、当事者間に争いのないところであるから、当業者がこの点に着眼して、さらに医療効果を高めるべく、加熱用赤外線電球に代えて医療用赤外線電球を使用することを着想するにいたることは、経験則に照らし、きわめて自然のことであるといわなければならない。
{商業的成功に対する裁判所の評価}
新製品が従来の型の製品を市場から駆逐するに至る要因としては、製品の経済性、デザインの良否、販売方法、経済状況の変動等種々のものがあり、一概に新製品がすぐれているとは断定できない。
(B)昭41(行ケ)104号 戸車用レール事件
事件の種類 実用新案登録無効事件
引用例 「適宜断面形状の金属芯体の周りを厚いゴムの被覆体で緊密に被包して成る戸車用レール」
相違点…「ゴム」を「ビニール等の合成樹脂」とした点
{審判部の評価}
ビニールが従来のゴム、エボナイト、ベークライト硝子、金属等に代る新材料として出現した場合ゴムをビニールに代えるごときは商品の品質向上を心掛ける当業者が当然行なうべき材料変換で考案力を要しない公知材料の選択使用に過ぎない
{当事者(権利者)主張の作用効果}
ビニール等の熱伝導率が小であるため日光の直射を受けてもレールの表面がいちじるしく高温となることがなく、かつ、加熱による線膨脹率に大きな差異のあるビニール等と金属芯体との組み合わせにより高熱を受けてもレールの伸延反曲を生ずることがない。
{作用効果に関する裁判所の評価}
鉄芯材と塩化ビニールとを組み合わせたものにおける線膨脹係数比および熱伝導率比と鉄芯材とゴムとを組み合わせたものにおける線膨脹係数比および熱伝導率比とは、全く同一とはいえないが、両者の間にさしたる差異はない。
{商業的成功に関する裁判所の評価}
引用例の考案は実施されそれが市販されたという事実がなく、他方、本件登録実用新案の実施品が市販後直ちに多大の需要を呼び、戸車用レールの市場需要の大半を制したという原告の主張が真実であるとしても、かかる事情は叙上の認定判断を覆すほどのものではない。
③ここでは挙げていませんが、米国での関連事例(→commercial successとは)では、“商業的な成功”を“長期間要望された課題”と結び付けて、長年要望されていた課題であったが、誰も実施しておらず、特許出願人が製品化した途端に商業的に大成功を収めた、という主張があります。理屈の上では、そうした方が課題解決手段の実現が困難だったという結論を導き出し易いのでしょうが、それでも“課題解決手段は当たり前のことであるという心証”を裁判所に持たれてしまうと、それを覆すのは難しいことです。
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