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 パテントに関する専門用語
  

 No:  448   

進歩性審査基準/特許出願の要件(外国)/commercial success

 
体系 実体法
用語

commercial success

意味  Commercial success(商業的成功)とは、例えば発明品の売れ行きが圧倒的に良好であるとか、市場のシェアが著しく高いというようなことをいい、商業的成功が発明品の技術的な特徴・利点にあるときには、非自明性(進歩性)の判断で肯定的に評価されます。


内容 @米国特許出願の非自明性の判断手法であるグラハム・テストでは、“長期間要望されてきた課題、商業的成功、他人の失敗、予期しない結果などの2次的考察を考慮する。”とされています。

A“commercial success”の主張を確立するためには、少なくとも特許発明のメリットと商業的成功の事実との間に関係性(nexus)があることが必要です。ただ漫然と特許品の世間での評価がよいというだけでは足りません。
Nexus(関係性)とは〔商業的成功〕

Bまた米国では“commercial success”は良く見かける主張ですが、その主張が成功することもあれば、不首尾に終わる場合もあります。

 どこが違うのかというと、成功例では、その主張単独ではなく、他に有力な主張(新しいアイディアや他人の失敗)があって、主たる主張と従たる主張とのコンビネーションが説得力を生み出しているのです。

 失敗例ではそうした主たる主張がなく、“commercial success”の主張がいわば空回りしているように見えるのです。

C成功例−Jeoffroy Mfg., Inc. v. Graham 206 F.2d 772

 これはグラハム判決の第1事件に先立ってグラハム特許より先に本人が特許出願をした先行発明の特許の有効性が争われた事例です。原告と被告とはほぼ同時期に競い合うように鋤(プロー)を具備する農地を耕す装置を完成しました。しかしながら、グラハムの発明は商業的に成功を納めたのに対して、競争相手の発明品は商業的に失敗に終わりました。相違点は、グラハムの発明では、農地を掘削する掘削具を支える棒(シャンク)の基部を柔軟にかつ摩擦的に保持する(resiliently and frictionally held)構造となっていたのに対して、相手方の発明はそうではなかったことです。相手方は多数の先行技術を引用して、グラハムの先行発明は、先行技術の組み合わせに過ぎないと主張しましたが、裁判所はグラハムの先行発明は自明ではないと判断しました。

D失敗例−383 U.S.1-(II)

(イ)これは、グラハム判決の第2事件であり、特許発明の非自明性が争われた事例です。

(ロ)発明の内容は、一本指でヘッドを操作するタイプのポンプスプレーの下半部を、容器体の口頸部内へ挿入して、口頸部の外面に装着した環状のキャップでスプレーを固定し、ポンプスプレーを覆うオーバーキャップの下部をキャップの外面にねじ止めし、オーバーキャップの内面とキャップとの間に液漏れ防止用のリブ技術を適用したものです。

(ハ)裁判所は、従来のスプレー容器の構成のうち液漏れ防止用のワッシャーを、隣接分野(液体注出容器)のリブに対応する技術に置き換えることは容易であり、たとえ特許権者の製品が商業的に成功していたという点を考慮しても、非自明性(進歩性)を認めるには足りないと判断しました。


留意点  我国の進歩性審査基準は、“商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができる。”と記載されていますが、少量的成功は参酌事項に過ぎず、先行技術との相違点が設計的事項程度であると、進歩性を認めるには至らないと判断されることが多いと考えられます。

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