内容 |
A事例1
昭53(行ケ)206号「静電記録媒体」事件」
{事件の種類}拒絶査定不服審決取消請求事件
(A)本件特許出願の明細書に次の事項が記載されています(特公昭56−33703号)。
{発明の目的}
発明の第1の目的は、「パルス電圧充電による静電記録方式において、充電用電極と記録媒体の表面との間の間隙が記録媒体自体によって保たれるという新しい解決の手段を提供すること」です。
発明の他の目的は、「充電用電極と記録媒体の誘電表面との間隙を正確に保つことにより比較的低い電圧で充電を確実に行うことができる静電記録媒体を提供すること」であり、
本発明の更に他の目的は、「容易に経済的に得られる間隙あけを行い、しかも従来の静電記録方式に適用できる静電記録媒体を提供すること」であり、
本発明の更に他の目的は、「所定の間隙あけを行うため、充電用電極または記録媒体の外部調整の必要をなくした静電記録媒体を提供すること」であり、
本発明の更に他の目的は、「充電ヘッドに接触するとき少なくとも80%の誘電表面が所定の間隙又はそれに近い間隙を保つことができる静電記録媒体を提供すること」です。
{発明の構成}
「充電用電極手段を有する電圧充電装置で静電記録をするのに用いられる静電記録媒体において、静電電荷を受けて保持する外表面を有する誘電層と、前記誘電層の内部に少なくとも一部が埋設され前記誘電層の前記外表面から〇・〇〇一二七mmないし〇・〇一〇一六mm(〇・〇五milないし〇・四mil)突出したスペーサ手段とを有し、前記スペーサ手段は前記誘電層の前記外表面のうち少なくとも八〇%に相当する電荷保持面を残すように相互に間隔をあけて設けられていることを特徴とする静電記録媒体。」
{発明の効果}
(イ)「記録媒体の外表面上に突出するスペーサ上に突出するスペーサ手段が設けられているので記録媒体を特別に支持手段によって支持することなく記録媒体の電荷保持面と充電用電極の下部露出端との間に所定の間隙を高精度で維持できることができるので、電荷保持面への充電を確実に行うことができる。」
(ロ)「スペーサ手段が記録媒体に設けられているので、電荷保持面への充電を確実に行うことができる。」
(ハ)「スペーサ手段の摩擦による種々の問題が生じない。」
(ニ)「スペーサ手段の少なくとも一部が誘電層に埋設されているので、スペーサが誘電層に強固に保持される。」
(ホ)「スペーサ手段が誘電層の外表面のうち少なくとも80%に相当する電荷保持面を残すように相互に間隙をあけて設けられているので、スペーサ手段の存在による電荷保持面の面積の減少を抑制して鮮明な記録を得ることができる。」
B裁判所の判断
“引用例のものは、スペーサ手段である粉末材料を誘電層表面に振撒くものであるから、記録を行なう毎にそのための操作に手数がかかり、また、個々の記録装置にもそのための特別の装置が必要となるものと認められる。これに対し、本願発明の静電記録媒体においては、その誘電層に予めスペーサ手段が埋設するようにして設けられており、引用例のもののように特別の操作をその都度行われなくても、記録媒体自体によって充電用電極手段との間に所定の微小間隙を保つことができるので、それだけ操作の手数を省いて記録速度を高めることができ、また、記録装置を簡単にすることもできると認められ、この点は本願発明の奏する顕著な効果ということができる。”
|