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①1~3年次の特許料は、特許出願人がいわゆる特許査定の謄本の送達があった日から30日以内に支払うべきものとされています。従って、特許権を維持するための料金ではなく、特許権を発生するための対価(米国特許出願では言うところのIssue
Fee)に相当するものです。
②なぜそうした対価が必要とされるのかというと、特許権の設定登録の事務を行うための役所の手間賃というだけでなく(もしそれだけであれば予め特許出願の際の庁の手数料にに含めておけば足りる)、やはり、真に特許権を発生させるために必要な発明を選別するという意図があると思われます。
③特許出願は、国に対する独占排他権の付与の意思表示として行われるものですが、その後の特許調査で新規性や進歩性を有しないことが判明したり(いわゆる誤算的な特許出願)、或いはより優れた技術が生まれて競争力がなくなったり(特許出願の陳腐化)、特許出願人の実施化の優先順位が別の発明に移ったり、或いは特許出願人の事業そのものが廃止されたりして、特許出願の対象が独占を望まれない発明になることがあります。
こうした特許出願に対して独占排他権を付与するのは無駄ですので、現行の制度では、特許出願の実体審査(新規性・進歩性等の審査)を行う前に特許出願人に出願審査請求を行わせ、特許出願の日から3年以内に当該請求が行われない特許出願を取り下げ擬制する(特許出願の効果がなくなる)ことにしています。
しかしながら、出願審査請求をしたからといって、特許査定の段階で100%の特許出願人が権利を望んでいるわけではないので、特許出願に対する処理の最終段階で1~3年次の特許料を支払わせ、もう一度実施の独占を望む発明を選別することにしているのです。
実際に特許出願の実務に携わると、100件中数件の割合で1~3年次の特許料を納付しないという決断をされる特許出願人がおられます。実体審査には1年以上の時間を要しますので、それも止むを得ないことなのでしょう。
④1~3年次の特許料の金額に関しては下記を参照して下さい。 →特許出願の費用(特許料)
⑤ちなみに、意匠登録出願の場合には査定謄本の送達後の所定期間に支払うべきであるのは、1年次の登録料のみです。
(イ)それではなぜ特許法では、最初に支払うのが“1~3年次”の特許料なのかというと、これは過去の特許制度に関係しています。
(ロ)昔は、審査官が特許をしてもよいという一応の心証を得ると、出願公告の決定を行い、出願公告から一定期間内に何人にも特許をすることへの異議申立を行うこととする(いわゆる公衆審査)とともに、出願公告から特許権の設定登録迄の間に特許権とほぼ同等の効力を有する仮保護の権利を認めていました。
(ニ)この仮保護の権利の発生に先立って特許料の支払いが求められていました。仮に1年分の特許料のみで足りるとすると、異議申立の審査が長引いて1年以上の時間を要し、そして2年目の特許料が支払われなくなったときに、審査が無駄になってしまいます。そういうことを回避するために1~3年次の特許料を納付することにしていたのです。
(ホ)特許付与前の異議申立制度が廃止された現在では、初回の納付分を1年次のみと改正することもできる筈なのですが、この点に関しては特に変更もなく今日に至っているのです。
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