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@国内手続の繰延べの趣旨
特許協力条約(PCT)は、複数国に保護を求める特許出願人の経済的負担を軽減するために、一定の方式的要件を備える国際出願に国内出願の束の効果を認めるとともに、国際段階で国内審査をサポートする国際調査・国際予備審査を行う仕組みを作り上げました。
これら諸手続を適切に行うために一定の時間が必要である反面、PCT出願の各国への移行分(我国で言うところの国際特許出願)があまり遅れて国内段階へ入ってくると、当該出願の後に行われた第三者の特許出願の審査がやり直しになるなど様々な不都合を生じる可能性があります。
指定国の特許庁(指定官庁)としては、特許出願人に対して自分の国へ移行するなら迅速に移行手続を採ることを要求したいというのが本音でしょうが、それを各締約国が勝手に国内法で規定することを許すと、PCTの制度がガタガタになります。
そこでPCTは、移行手続期間の満了まで指定官庁が国際出願の処理又は審査を行ってはならない旨を定めています。
A国内手続の繰延べの意味
「国際出願の処理又は審査を行ってはならない」とは、特許出願の審査の最終処分(査定)を行ってはならないだけでなく、拒絶理由通知をしてもならないことを意味します。
B国内手続の繰延べの解除
(a)国内移行手続期間が満了したときには、国内手続の繰延べは解除されます。
(b)国内移行手続期間の満了時期は、国際調査報告の到着が遅れても、引き延ばされることがありません。
(c)特許出願人は、国内移行手続の満了でも、国内手続の処理又は審査を明示的に請求することができます(PCT23条第2項)。
(d)この明示の請求は、我国では出願審査請求に該当します。特許出願人が国内移行手続の満了前に出願審査請求をすることにより国内処理基準時が早まります。
→国内処理基準時とは
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