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507 特許出願の要件/拡大された先願の地位・書類の範囲 |
体系 |
実体法 |
用語 |
拡大された先願の地位が認められる書類の範囲 |
意味 |
拡大された先願の地位は、先願である特許出願・実用新案登録出願の最初の開示範囲の全体について、出願公開・特許掲載公報・実用新案掲載公報の発行前にされた後の特許出願等を排除する地位です(特許法第29条の2)。
ここでは開示範囲である書類の範囲について解説します。
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内容 |
@拡大された先願の地位の規定の趣旨は、先願が公開した発明を再び後願が公開しても新たな技術を開示しないため、これを特許することは、特許出願等に通じた発明の公開の代償として独占排他権を付与する特許制度の趣旨に反するということです。
こうした趣旨からすると、その特許出願等に関して公表された書類の一切に関して拡大された先願の地位を認めるという考え方もあり得ます。
しかしながら、拡大された先願の地位は、法律体系の上では先願主義の例外であり、この先願主義は、ダブルパテント排除の要請から相互に競合する特許出願同士の利益を調整するものです。
こうした理由から、拡大された先願の地位が認められる書類の範囲に関しては一定の規制があります。
A通常の特許出願の場合の拡大された先願の地位の範囲
(a)当該先願の地位が認められる書類の範囲は、特許出願の願書に最初に添付した明細書・請求の範囲・図面です。
これらの書類に記載した事項が補正により請求の範囲に取り入れることができる範囲だからです。
(b)従って特許出願の日に開示された書類であっても、要約書は対象外です。
(c)他方、補正書の内容は、出願公開の対象となり得ますが、拡大された先願の地位は認められません。特許出願の日に開示されていなかった技術内容に拡大された先願の地位を認めることは、第三者の利益を不当に害し、特許出願人を不正に保護することになるからです。
B外国語書面出願の場合の拡大された先願の地位の範囲
(a)当該先願の地位が認められる書類の範囲は、外国語書面です。
(b)外国語書面とは、日本語主義で通常の特許出願の願書に添付される明細書・請求の範囲・図面に代えて、明細書・請求の範囲に記載すべきことを外国語で記載したもの、図面中の説明を外国語で記載したものです。
(c)外国語要約書面は対象外です。
C外国語特許出願の場合の拡大された先願の地位の範囲
(a)当該先願の地位が認められる書類の範囲は、国際出願日の明細書・請求の範囲又は図面です。これらの書類は明細書等の原文です。
(b)平成6年改正前には原文と出願翻訳文との重複部分にのみ拡大された先願の地位を認めていましたが、上記改正で外国語書面出願制度に合わせて上記の通り改正されました。
(c)出願翻訳文は拡大された先願の地位の範囲と無関係といっても、所定期間内に翻訳文が提出されずに取り下げ擬制された場合には、そもそも拡大された先願の地位が認められません。
→拡大された先願の地位が認められる出願の範囲
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