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 パテントに関する専門用語
  

 No:  508   

特許出願の要件/拡大された先願の地位・出願の範囲

 
体系 実体法
用語

拡大された先願の地位が認められる出願の範囲

意味  拡大された先願の地位は、先願である特許出願等の最初の開示範囲の全体について、出願公開等の前にされた後願の特許出願等を排除する地位です。以下、この地位が認められる出願の範囲を解説します。


内容 @拡大された先願の地位を生じさせる出願は、特許出願及び実用新案登録出願です。

(a)特許出願の対象と実用新案登録出願の対象とは、技術的思想として同質であり、拡大された先願の地位を適用することに不自然さはないからです。

(b)これに対して、意匠出願は対象外です。意匠出願の公報に掲載されたデザイン上の構造は技術的思想として成立する可能性があります。しかしながら、意匠出願と特許出願との間には先願主義による調整規定が存在せず、先願主義の拡張的例外である特許法第29条の2を適用しにくいからです。

(c)“拡大された先願の地位”を生じる出願には、パリ条約優先権を主張する特許出願(又は実用新案登録出願)を含みます。

(イ)ここでパリ条約優先権とは、同盟第1国出願に基づいて同一の発明について優先期間中に同盟第2国出願をした場合に、優先期間中の出来事で第2国出願を不利に扱わない旨の権利です。

(ロ)同盟第1国出願を含まないので、同盟第1国出願の明細書・特許請求の範囲・図面は特許法第29条の2の明細書・特許請求の範囲・図面に該当しません。

(d)“拡大された先願の地位”を生じる出願には、国際特許出願(PCTルートで行われた特許出願)が含まれ、「出願公開」に代えて「国際公開」を条件として当該先願の地位を発生します。

(イ)但し、国際特許出願のうち外国語でされたもの(外国語特許出願)に関しては、所定の期間(→国内書面提出期間)内に翻訳文を提出せず、取り下げ擬制されたときには、“拡大された先願の地位”を生じさせません。

(ロ)通常の特許出願の場合に出願公開後の取り下げ等により拡大された先願の地位が失われることがないことに照らし合わせると、国際公開後に外国語特許出願が取り下げ擬制されても上述の地位を左右しないという解釈が生ずる可能性があるため、現行法は条文中で“拡大された先願の地位を生ずる出願から除外する”旨を明記しています。

(ニ)原則として指定国に日本国を含みかつ国際出願日が認定された国際特許出願は、「国際出願日にされた特許出願」と見做す旨が規定されています(特許法第184条の3第1項)。

(ホ)しかしながら、外国語特許出願において出願翻訳文が提出されないと、拡大された先願の地位を生じさせる書類(国際出願の明細書・請求の範囲・図面の翻訳文=我国の明細書・請求の範囲・図面と擬制される)が存在しないこととなり、特許出願の手続が我国に確定しているとは言い難いため、上述のような取り扱いをしました。

A出願公開などが行われた後に特許出願が取り下げられ、放棄されても影響がありません。

 すでに公開により先願の明細書等に記載された発明の保護価値が失われているからです。

B「当該特許出願の日前」の他の特許出願等が対象であるから、同日出願は対象外です。これは、特許法第39条(先願主義)が特許出願の「時」ではなく、手続の便宜性を考慮して特許出願の「日」に基づいて適用されることに対応しています。

 先願Aが同日の午前中、後願Bが同日の午後に行われたときには、先願主義の下では協議を行うことになっています。そうした場合に、拡大された先願の地位の規定により、後願Bを先願Aにより拒絶できるとすれば、協議不成立の場合に、先願主義の規定によって特許出願A、Bの双方を拒絶することと、拡大された先願の地位の規定により、先願Aを活かして後願Bを拒絶することとを、特許庁の裁量によって選択することができることとなり、望ましくないからです。

C先願の特許出願人がした特許出願等(後願)は対象外です。

 例えば或る物の発明、物の製造方法の発明、その物を製造・使用・保存する物等の発明を別々の特許出願で行う場合に、先の特許出願等の請求項に記載された発明の説明のために他の発明に言及していた場合に、拡大された先願の地位により後の特許出願等願を拒絶されるのは不合理だからです。
出願人同一による拡大された先願の地位の適用除外とは

D先願の明細書等に記載された発明と後願に係る発明とが同一の発明者によるものである場合の、後の特許出願等も拡大された先願の地位を生じさせません。

 当該発明者は、先の特許出願等であるのか、或るは後の特許出願等であるのかの違いがあるだけで、実質的にその発明を世に出すことに貢献しており、このことを考慮に入れれば、先の特許出願等の開示内容が秘密の段階でした出願を、拡大された先願の地位の規定により拒絶するのは、酷に失するからです。
発明者同一による拡大された先願の地位の適用除外とは


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